虫君マイナーモード

戸森

第1話

学生時代。思い出すだけで、億劫な気分になる。

退屈で高慢ちきな先生、深い思考を邪魔する学友。

私を変わり者だと、彼らは異星人でも見るような目で、

哀れみ、蔑んでいた。

だから私は、友など、出来るはずないと思っていた。


大学に入学し、初めて、本当に息が吸えたような気がした。

知識の渦と、思考の山の全てが私を歓迎してくれているように感じた。


そこで、出会ったんだ。


横溝正史_ぼさぼさの頭に、温厚で遠慮がちな性格の皮を剥けば、むき出しの知的活動があまりにも正直に顔を出す。


なんだ、こいつの情熱は。

こいつは本当の馬鹿だ。その瞳の奥には、一つしか存在していない。

ただ、ミステリー その一単語だけだ。


初めて会った時、確かに震えたんだ。こいつは、こいつは、

こいつは、そうなんだ。と。

なにが、 そう なのかは私にもわからない。

だが、一つ言えることは、その感覚は正しかった、ということだ。


ミステリー談議で、白熱した討論を夜ごと繰り広げた。

お互い、譲らない、相手が返した言葉に更に疑問を投げかけて、

また朝日とともに、目を閉じる。


不可思議な私たちのコミュニケーションはきっと、

私には、きっと、それが救いだったのだろう。


あの時の不思議な感覚は、死ぬまでこの胸の中に熱い気持ちと共に蘇ってくるだろう。友よ。 死んでくれるなよ。


馬鹿なヨコミゾ。 お前は本当に、、、。

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虫君マイナーモード 戸森 @watashi_tensai_ikiru

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