第3話 ちょうちょの虜
やあ、諸君。
今俺は何をしてるかというと…
「お兄ちゃん見て!これがニジアゲハだよ!」
「すげぇぇぇぇぇ!!!綺麗!!!!」
この村で仲良くなったタイトくんと仲良く遊んでいる。タイトくんも蝶が好きらしく、たまに珍しい蝶を持ってきては見せてくれる。
あー、今日もいい天気だ。
ちなみにマーガレットは食材の買い出しに行ったらしい。この村、木の実系が特産品らしいんだよね。たまには肉とか食べたいよなぁ。
「あ!あんなところにギンパクチョウが!」
「どこ、どこだ!?」
俺たちは草むらに隠れながらギンパクチョウを追いかける。ギンパクチョウなんてなかなか見れないぞ、ガチで。まあもしかしたらギンパクチョウに似てる見た目してるヒトクイガかもしれないけどさ。ヒトクイガは魔物なので普通に襲いかかってくる。
「それにしても、魔物かぁ」
城から逃亡してからもう2週間。追手はまだまだ来そうにないのでこうして安心して過ごせている。ただまあ…毎日魔物討伐リハビリはやらされているが。一応最近は肉食イノシシ程度の魔物は倒せるようにはなってきた。
「うわぁ!お兄ちゃんごめん、これヒトクイガだ」
「やっぱそうかっ!俺がなんとかするから下がってろ!」
ヒトクイガは幼い子供を誘き寄せて殺す。なので、この村の子供たちはチョウがいても近寄らないように英才教育されている。まあ、タイトくんは別だが…
おっと、ヒトクイガが飛びかかってきた!
ヒトクイガは幼い子供にとっては驚異だが成人男性ならまあ殴り合いでも普通に勝てる。
「そら!」
剣を持ってる俺ならまあ楽々処理できるわな。
「ありがとうお兄ちゃん!僕一人ならもう死んでたよ!」
「ははは、気軽に死ぬなんて言っちゃいけないぞ」
まあ2週間前まで死を望んでた俺が言えるタチではないけどな。
「お兄ちゃんって剣持ってるし冒険者なの?」
「あー…まあ、だいたい合ってる」
かつては勇者で今は逃亡者だけど。
おっと、もう日が暮れてきた。夜は危ないし、そろそろ村に戻るとしよう。
「とりあえずヒトクイガの死体でも持っていくとするか、ちょっとは金になるだろ」
自分の心が少しずつ戻っていくのを感じる。まだまだ完全復活は遠い先の話だとは思うが…
「遅かったですね。…?そのお金はどこから」
「タイトくんと遊んでたらヒトクイガが襲ってきてさ。それの素材剥ぎ取って金にしたんだ」
俺はマーガレットに金を渡す。世話というか介護されているのだ、これくらいはしなくては。もっとも…ヒトクイガの素材を売ったところで大した金にはならないのだが。渡した金は30アト。だいたい1アト1円なので30円だ。
「ふふ、そうですか」
多分道草でも集めて売った方が金になると思うんだけどマーガレットはやけに嬉しそうだ。何故?もしかして、30円が貴重なほど俺たちって結構ギリギリの生活送ってたりするのかな。
「ところで…魔物討伐リハビリって明日もやるの?たまには休みが欲しいんだけど。ブラックだよ」
マーガレットが作ってくれた豚汁…正確に言うと肉食イノシシ汁を吸いながら俺はそう言った。
「あれそんなにブラックですか?2時間労働なのでかなりホワイトだと思うんですけど。…そのことについてなんですが」
おや?
「ここの村の近くに危険度の高い魔物、マザースパイダーが発見されたらしいです。それが退治されるまでしばらくお休みですね」
おやおやおや!!
確かマザースパイダーは魔王城近くにあるカエスタ沼地にいた魔物だった気がする。そりゃ危険だ。でも…
「マーガレットなら倒せるだろ?」
目を逸らされたんだけど。
「そりゃそうなんですが………ほら、今の私たちって国に追われてる立場じゃないですか」
ああ…
「マザースパイダーなんて討伐したらおそらくすぐに私たちの身元は国にバレるでしょうね…」
そしてぶちころされると。
なんかさ、100%安心できますよって場所とかないのかな。
この世界の国、ほとんどがこのクソ国ナブリデストの属国だからガチで安全な場所ないんだよね。もう終わりだろ…
「なので、マザースパイダーはこの村の自警団や冒険者に任せるしかないですね…」
「じゃあ俺ってこれからどうすればいいの?ヒモ男になるしかない?」
「もう十分なってると思いますが…そうですね。まだ行くつもりはなかったんですが、マザースパイダーが討伐されるまでバドイにでも行こうかな」
バドイってなんだっけ。確か海岸近くにある村だった気がする。確か昔訪れたことあるわ
「テレポート先に登録してあるのですぐに行けますが…どうします?バドイに行きますか?」
「ずっとちょうちょ見てたいから行かなくていいよ」
「かつての勇者の面影がまるでない…!」
そんなこと言われても……
猛反対を続けたものの、結局しばらくバドイに行くことになってしまった。そんな…
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