第6話 言葉集めゲーム
「今日は花音の番よね!ちゃんと何か考えてきた?」
わたしが部室に入るなり梓先輩がそう言ってきた。
「考えてきましたけど。それよりも先輩、それって・・・」
梓先輩は「ん?これ?」と手に持っているものを軽く上げた。
「見ての通りポテトチップスよ」
そういってまた一枚口に運ぶ。
『ポテトチップスよ』って、昨日の今日でもう。
「いうだけ無駄よ、花音ちゃん。さっきわたしたちも言ったんだけど『明日から頑張るわ』って聞かないのよ」
あ~これはやらないやつだ。
グ~~
どこからか音がした。
あれ?理沙先輩が恥ずかしそうにしている。・・・もしかして。
「理沙も理沙だよ。お昼ごはんぬいたでしょ」
葵先輩に指摘された理沙先輩はギクッと体を震わせた。
図星みたい。
「な、なんのことかしら」
あ、ごまかした。
「だめだよ理沙!お昼ご飯はちゃんと食べないと」
こちらはパンをほおばりながら寧々先輩はそういった。
寧々先輩、今それは・・・
「寧々ちゃんにだけは言われたくないわよ!」
案の定理沙先輩は涙目でそう叫んだ。
「ごめんごめん」と言いながら寧々先輩はわたしのほうを見た。
「それはそうと花音はなにを考えてきたの?」
あ、そうだ。すっかりそのことを忘れていた。
「あの、『言葉集めゲーム』なんてどうでしょう?」
「いいわね!せっかくだし勝負しましょう!」
勝負?
「同じ文字で初めて最後に集めた言葉の数が多かった人が勝ちってのでどう?」
「おもしろそうね。花音ちゃんはどう思う?」
「楽しそうだしいいと思います」
「ちなみに何の文字から始めるの?」
それはまだ決めていない。事前に決めたらずるい気がしてね。
そうだなー。
「春の『は』でいきましょう!ただし今言った『春』、それから字が違っても同じ読みのことばはなしで。」
わたしの提案に先輩たちは「いいね」と言ってくれた。
「あ!ちょっと待ってて」
そういって寧々先輩は部室の棚のほうに行った。
何だろう?
少ししたら何かをもって戻ってきた。
「はい、これ!あったほうがいいでしょ」
そういって渡されたのはA4サイズの紙と油性ペン。
そういえば書いておくものを用意するのを忘れていたな。
「ありがとうございます!それじゃあわたしのスマホで時間を図りますね。よーいスタートです!」
わたしの合図でそれぞれ考え始めた。
うーん、は、は、は、は・・・なんだか笑い声みたいになっちゃった。
いろいろと考えていたらあっという間に時間になった。
「それじゃ皆さんが思いついた言葉を見せ合いましょう!」
そういってわたしたちはお互いに紙を見せ合った。
わたしが書いたのは『鳩』、『橋』、『羽衣』、『はがき』、『母』、『歯磨き』、『敗北』。
梓先輩が書いたのは『葉』、『歯磨き』、『歯磨き粉』、『歯ブラシ』、『葉っぱ』、『箸』、『浜辺』、『歯車』。
寧々先輩が書いたのは『箱』、『はんこ』、『灰』、『廃墟』、『はがき』、『博士』、『肺』、『はっぴ』。
理沙先輩が書いたのは『春巻き』、『春雨』、『ハヤシライス』、『ハンバーグ』、『ハンバーガー』、『ハムカツ』。
葵先輩が書いたのは『ハンガリー』、『白金』、『灰色狐』、『梯子』、『鳩』、『肺』、『白紙』、『ハロウィン』、『ハローワーク』、『爬虫類』、『薄力粉』、
『博士』、『派閥』。
「ちょっと梓!なに?『歯磨き』『歯磨き粉』って一文字足しただけじゃん」
梓先輩のを見た寧々先輩がそう言って怒った。
それに負けじと梓先輩も言い返す。
「なによ!文句でもあるっていうの⁉」
「それだけじゃないよ!『葉』と『葉っぱ』って意味同じじゃん!なしでしょ!」
あーそれはわたしも思った。でも。
「あらかじめそのあたりのことを決めておかなかったわたしにも責任があるので今回はありでいいですよ」
わたしがそういうと梓先輩は「ほらね!」と言って喜んだ。
でも梓先輩のもだけどそれよりわたしが気になったのは。
「理沙先輩、やっぱりおなかがすいてますか?」
だって書いてあるのが食べ物ばっかりなんだもん。
「それはボクも思ったな。大丈夫?」
わたしと葵先輩の心配に理沙先輩は「大丈夫よ」といった。
「なんとかなるわ!」
グ~~
いやなってますけど。
「き、きにしないで。夜ご飯はちゃんと食べるから」
理沙先輩はちょっと頬を赤くしながらそう言った。
それはそうと。
「一番多かったのは葵先輩!おめでとうございます!すごいですね!」
「ありがとう。花音も『羽衣』なんてよく出たね」
えへへ
「偶然今日の授業で出たのを思い出したんですよ」
その時、ちょうど梓先輩と寧々先輩の言い争いも落ち着いたようだ。
どっちが勝ったのかはまたもめそうだから聞かないでおこう。
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