第5話 古今東西ゲーム
今日は身体測定の日だった。
わたしが部室に入ると、そこにはいつになくくらい空気があふれていた。
「大丈夫ですか?梓先輩?」
「大丈夫じゃないわよ!」
梓先輩はさっきから「痩せなきゃ、瘦せなきゃ」ってつぶやきながら部室でスクワットをしている。
ただすごく苦しそうだしそう長続きはしないんじゃ。あ!いってるそばからもう疲れて座り込んじゃった。
その横では理沙先輩が優雅にお茶を飲んでる。あ!いや違う。ものすごく手が震えてお茶がカップからあふれている。
「理沙先輩、ハンカチ貸しましょうか?」
「え⁉い、いや大丈夫ですわよ!おほほほほ!」
絶対大丈夫じゃないやつだ!言葉遣いがおかしいもん!
「落ち着いているようだけど花音はどうだったのよ!」
「わたしですか⁉わたしは・・・幸い前回とほとんど変わらなかったです」
「「・・・・」」
あ、あれ?わたし・・・やっちゃったかも。
「やっほー!みんなおつかれー!」
そこに寧々先輩が入ってきた。
「あ!寧々!あんたは身体測定どうだったのよ!」
寧々先輩はきょとんとして答えた。
「ウチは特に変化なかったよ!何ならちょっと減ってた」
「なんですってーーー!!!裏切者!」
「そうですよ!測定前にあんなに食べていたのに!」
寧々先輩は二人の迫力に驚いている。
「花音、ウチ今何かやったかな?」
すみません。
「わたしも寧々先輩はとても大きなことをやらかしたと思います」
しかし梓先輩と理沙先輩は怒りの形相でわたしのほうに見た。
「花音もよ!」「花音ちゃんだって!」
え、ええ。
わたしと寧々先輩が顔を見合わせていると、葵先輩が「おつかれー」と言って入ってきた。
葵先輩は騒いでいる梓先輩と理沙先輩を見ると質問をした。
「二人とも何があったの?もしかして身体測定の結果が原因?」
二人はビクッと肩を揺らした。
「体重が増えたとか?」
また同じ反応をした。
どうやら図星みたい。
「はぁ、日ごろからちゃんと運動しないからだよ」
「でも文芸部には体力なんてい必要ないじゃない!」
「そ、そうよ!」
梓先輩と理沙先輩の反論に葵先輩は「だけど」と言い返す。
「それだと太っていくだけだよ。ちゃんと運動はしなきゃ」
二人はついに黙りこくってしまった。
しばらく居心地が悪そうにしていた梓先輩が急に「そういえば」と口を開いた。
「今日は葵が何か考えてくる番よね!何を考えてきたの?」
「そ、そうよ。何を考えてきたの?」
あ、逃げた。
「はぁ、まったく。まぁいっか。今日ボクが考えてきたのは『古今東西ゲーム』だよ」
それってたしかお題に関連するものを順番に言っていくゲームだっけ。
「いいじゃない!じゃあ負けた人はここで増えた体重を公開ね!」
え⁉それはいくら何でも。
ほら、理沙先輩とか見たことない表情をしているもん。
「勝てばいいのよ勝てば。順番は葵、私、花音、寧々、理沙でどうかしら」
わたしはそれで構わない。どうやらほかの先輩も同じようだ。
「じゃあ行くよ。お題は・・・『しろいもの』で行こうか。まずはボクから。『マシュマロ』」
パンパン
「『雪』!」
わたしの番だ!えーっと
「『カブ』」
よかった。何とか思い浮かんだ。
パンパン
「ありがとね!『大根』」
しまった!ヒントを与えちゃった!そういうことを考えながらやらなきゃなのか。
パンパン
「『牛乳』」
これで一周した。
パンパン
「『豆腐』」
パンパン
「えーっと、えーっと・・・・『ソフトクリーム』!」
「「「「・・・・・・」」」」
「え?な、なによ」
梓先輩・・・
「時間切れだよ。梓」
葵先輩の発言に梓先輩は「うそでしょ!」って驚いている。
「負けた人は増えた体重を公開するんだったよね!」
寧々先輩・・・梓先輩「こんなはずじゃなかったのに」って悔しんでるよ。
反対に理沙先輩はものすごくうれしそうな顔をしている。
「梓先輩、無理に言わなくてもいいですよ」
「そうだよ。いやならやらならやらなくてもいいよ」
わたしと葵先輩がそう言ったが、梓先輩は「ありがとう」といった。
「言い出したのが私である以上約束は守らないとね。私の・・・増えた体重は・・・2㎏よ」
・・・え?それって別にそこまで気にする重さじゃなくない?もともと梓先輩ほっそりとしているし。
「私にとっては一大事なのよ!」
まあ基準は人それぞれってことか。
ところで梓先輩が公開してから理沙先輩がまた絶望した表情を浮かべている。そっとしておこう。
今日はこれで解散になったけど、明日は我が身っていうしわたしもしっかりと運動しないとな。
て言うか明日ってわたしが何か考えてこないとだよだよね⁉︎
まあ週末に決めたあれでいいか。
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