第2話 しりとり
文芸部に入った翌日の昼休み、私は小夏と一緒にお昼ご飯を食べていた。
「結局文芸部に入ったんだね」
「なりゆきでねー、そうなっちゃったんだよ」
私がため息をつきながら話すと、小夏は笑いながら答えた。
「アハハ、聞いた話だとこの学校の文芸部ってもともと遊戯部で申請したけど許可されなかったから代わりに創設されたらしいよ」
あー、だから遊びがメインって言ってたのか。
「ま、せっかく入ったんだし楽しみなよ。すくなくともつらい部活ではないと思うよ」
まぁそうだよね。せっかくだし楽しもう。
その日の放課後、私は文芸部の部室へと向かった。
「失礼しまーす」
部室にはもうほかの先輩は来ていた。
「あ!来たようね、はいりなさい」
私を迎えてくれたのは梓先輩。相変わらず強気だなぁ。
「今日って何かするんですか?」
「ふふふ、聞いて驚きなさい。今日は『しりとり』をやるわよ!」
しりとり?それってあの終わりの文字から始まる言葉をつなげていくやつ?
「ただのしりとりじゃないよ!今日のは『ことわざ縛りしりとり』だよ!」
寧々先輩の説明によると、基本的には普通のしりとりといっしょだけど使っていいのはことわざだけ。パスはなし。濁点や半濁点はつけたり外した死してもいい。存在しないことわざを言ったり時間がかかりすぎた場合はその人の負けになるらしい。
「ルールは理解したかしら?負けた人はバツとして今度みんなにお菓子をおごるのよ!」
え!バツなんてあるの!
「それじゃあ始めるわよ!まずは私から!『両手に花』!」
「ボクの番だね。うーん、『難波の葦は伊勢の浜荻』」
なにそれ!
「葵先輩、それってどういう意味なんですか?」
「同じ草なのに難波では葦、伊勢では浜荻と呼ばれるように、同じものでも場所によって名前が違うっていうことだよ」
へーそんなことわざがあるんだ。
「次はわたしの番ね。『木を見て森を見ず』」
私の番だ。
「えーと、り、り、り。あ!『住めば都』」
「それならウチはこれだよ!『
また知らないことわざだ!
「寧々先輩その言葉の意味って何ですか?」
「立て続けに嫌なことが起きるって意味だよ!」
へー、先輩たちいろんなことわざを知ってるなー。
これってもしかして私ピンチ⁉
「一周したからまた私の番ね。『類は友を呼ぶ』」
「『河豚は食いたし命は惜しし』。これは楽しいことはしたいけど危ないことはしたくないなぁってことを表すことわざだよ」
聞くよりも先に説明されてしまった。
「『白羽の矢が立つ』」
あ!これは知ってる!たしかたくさんの人の中から選ばれることを表すことわざだよね。
ていうか次はわたしの番だ。
「つ、つ、つ・・・『月とすっぽん』!」
よかったー思いついた。ってあれ?先輩たちの反応がおかしいな。
「ふふふ、んで終わる言葉を言ったね!」
あ!ああああああーやらかしたーーー!
そうだ、つなげることだけ考えてすっかり忘れてた!
「ということはバツは花音ちゃんね」
「はい、明日お菓子を持ってきます」
私はがっくりとうなだれながらそう言った。
「さすがに入ったばかりの子にだけってのはかわいそうだからボクも半分出すよ」
「葵せんぱーい、ありがとうございますー」
葵先輩はいい人だ。
「じゃあ私は学校近くのケーキ屋さんのケーキがいいわ!」
「そこってすごく高いって噂の店じゃないですか!さすがに無理ですよ!」
梓先輩はいじわるな人だ。
「こーら!後輩をいじめない!」
ゴチンッ!
寧々先輩が梓先輩の頭を小突いた。
「いったーい。なにすんのよ!」
「『なにすんのよ!』じゃないよ!ケーキは自分で買いなさい!」
「冗談よじょーだん。買ってくれたらいいなーってくらいだから!」
アハハ
それを見ていた私と理沙先輩と葵先輩は一緒に笑った。
「じゃあとりあえずみんなで食べれそうなお菓子を何か買ってきますね」
「よろしくね!これで今日の活動は終了よ!あとはおのおの好きにしなさい!」
私は先輩たちにさよならを言うとお菓子を買うために帰ることにした。
初めての活動だったけど楽しかったし、この部活でなら明日からもやっていけそうだ。
私は意気揚々と近くのコンビニに向かった。
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