文芸部のことばあそび

月夜アカツキ

第1話 文芸部入学

 高校に入学して数日がたったわたしはある悩みを抱えていた。それは・・・

「部活がきまらないよ〜」

 いや別にね、無理に入らなくてもいいのよ。でもさ、せっかく高校生になったんだから何か入りたいなって思うわけよ。

 でもねーガチで頑張っている人たちと一緒に頑張っていける気がしないんだよねー。

「花音まだ部活で悩んでるの?」

 そう話しかけてくるのは幼馴染の小夏。まさか幼稚園から今までの付き合いになるなんて思ってなかったけど今となってはわたしの一番の親友だ。

「そうなんだよー。小夏は陸上部だっけ。昔から足早いからね〜」

「まぁそれもあるんだけど、一番の理由はあの部活の男子はイケメンが多いんだよねー」

 ガタンッ

 わたしは思わず椅子から転げ落ちてしまった。

「え!そんな理由で部活を決めたの!?」

「そんな理由だなんて心外だな〜。あのね、花音、高校生の3年間なんてあっという間に過ぎてっちゃうんだよ。受験とか考えたら2年しかない。私たちはその限られた時間で青春を全力で謳歌しないといけないんだよ」

 それにしたって男が目的だなんて。

「花音こそいいの?なーんにもしないまま卒業したら後から後悔するよ」

 それはわかってるんだけどねー。

 でもわたしは小夏みたいに割り切れないよ。

「あっ!やばい。ごめん花音。これから部活のミーティングだから。じゃーねー」

「あっ、ちょっと!」

 言うだけ言っていってしまった。

 はぁ、仕方ない。わたしも帰りの支度をしよう。

 わたしに合う部活ってないのかなぁ。

 わたしはトボトボと教室を出て廊下を歩き始めた。

 ちょうど曲がり角に差し掛かった時

「どいたどいたー」

え?

 ドカーン

 わたしは飛び出してきたポニーテールの少女とぶつかってしまった。

「イタタタタ。ちょっと!ちゃんと前まで歩きなさいよね!」

 え!今のってわたしが悪いの?

 て言うかこの人よく見たら先輩だ。校章の色が違う。

「あら?あなたもしかして1年生?」

「あっ、はい、そうですけど?」

 するとこの先輩は急にわたしの腕を掴んだ。

「ちょうどいいわ、ついてきなさい」

 え⁉︎え〜〜〜!

 何がどうなってるのかわからないままわたしは先輩に連れられた。


 連れてこられたのは部活棟の一室だった。

 扉の前には文芸部と書いてある。

 文芸部?このパワフルな人はてっきり運動部だと思ってたけど。

「新入部員を連れてきたわよ〜」

 パワフル先輩は勢いよく扉を開けて中に入った。

 て言うか今新入部員って言ってたよね⁉︎いつ入ったことになったんだろう。

 部屋の中には3人の女の人がいた。

「あら?おかえりなさい、梓ちゃん。新入部員ってその子?なんだかすごく戸惑っているようだけど?」

 そう声をかけてきたのは大人びた雰囲気のロングヘアの先輩だった。

 なるほど、パワフル先輩は梓先輩っていうのか。

「どうせ理由もなく梓が攫ってきたんでしょ」

 そう言って近づいてきたのは元気いっぱいですという感じのショートカットの先輩。

「失敬な、寧々。理由ならある!こいつが私にぶつかってきた」

「それほんとなの?」

 ロングヘアの先輩がわたしに聞いてきた。

 わたしは全力で首を横に振った?

「違うみたいよ。はぁ、強引に連れてきたってことね。謝った方がいいわよ。葵はどう思う?」

 葵と呼ばれたふんわりとした雰囲気のおさげの先輩は読んでいた本を閉じた。

「ボクも理沙と同じだよ。梓はもう少し落ち着いて考えた方がいいと思うよ。自分が絶対に正しいと思っているところがあるからね」

 梓先輩は怒られたからか拗ねたような顔になって私の方を向いた。

「悪かったよ、勝手に連れてきて」

 意外と素直に謝られた。

「ちょっとびっくりしただけなので気にしなくていいですよ」

 わたしの言葉に梓先輩は喜んだ顔をした。

「ほんと!じゃあ改めて、文芸部に入らない?」

 この先輩、きりかえはやっ!

「もしかして、もう部活決まっているの?」

 寧々先輩が聞いてきた。

 まだ決まってはないんですけど。

「決まってないのならよかったら見学して行かない?梓みたいに強引に入れようとは思わないけど、ウチらも新入部員が必要なんだよね」

 そういえばここには先輩しかいない。校章から見るに皆さん2年生だ。

 たしか新入部員を必ず入れないと部費を大幅に削られるって部活動説明会で言ってたっけ。

 わたしも部活を探していたから、せっかくなので見学していくことにした。

「じゃあまずは自己紹介からね。私は天崎梓。この部活の部長よ!私のことは梓でいいわ!」

「次はわたしね。わたしは長瀬理沙、気軽に理沙って呼んでね」

「ウチは春咲寧々だよ!ウチのことも寧々って呼んで!」

「ボクは水野葵。みんなと同じように葵でいいよ」

 パワフルなのが梓先輩。落ち着いているのが理沙先輩。元気いっぱいなのが寧々先輩。ふんわりしているのが葵先輩。

 て言うか梓先輩って部長なんだ。てっきり1番大人びている理沙先輩が部長だと思ってた。

「さて、私たちの自己紹介は以上よ。あなたの名前はなんなの?」

 あっ、まだわたしの自己紹介が済んでないや。

「わたしは空宮花音です。部活にはまだ入っていません」

「花音ちゃんね。何か質問はあるかしら?」

「あっ、それなら1つ。文芸部って普段どんな活動をしているんですか?やっぱり文芸創作ですか?わたしそう言うの苦手で」

 ・・・

あれ?わたし何かおかしなこと言ったかな。なんの反応もないんだけど。

「やっぱり文芸部って聞いたらそう思うよねー。でもうちはそう言うのじゃなくて、言葉で遊ぼうって感じの部活なんだ!」

「そう!だからあなたでもなんとかなるわ!ここはそんなガチな部活じゃないからね!」

 その言葉に葵先輩が少し呆れたような顔をした。

「それって自分で言う言葉じゃなくないかな。まぁ間違いではないんだけど」

「そう言うわけで、ね!ね!入らない?」

 うーんどうしよう。

「お願い!入ってよ!誰か入ってくれなきゃ困るのよ!」

 やばい梓先輩が目を潤ませながら上目遣いで見てくる。

 断りずらいなー。

 でもなー、何するのかよくわからないしなー。

「お願いよ!お願い!助かると思って!」


 気がついたら入部届を出していた。

 結局もしわけなさに負けてしまった。

 はぁ、まぁ部活が決まったってことでとりあえずはいっか。

 明日から活動頑張ろう。

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