ペルソナ

@clownfish

仮面

男は、いろんな表情を持っていた。



それは、その男の「良い」と呼ばれる部分だった。



だが、男の周りには人が寄ってこない。



男は、人に囲まれることに憧れを抱いていた。



そんなときに、男はをつけると、自分の周りに人が集まり、


その人たちが笑うことに気が付いた。



この仮面があれば、憧れが手に入る



男はそう思った。



それから、毎日仮面をつけた。



男には、友人がたくさんできた。



恋人もできた。



男は、満足していた。



しかしあるとき、男は仮面が少し窮屈に感じた。



自分が大きくなったのだろうか。



男は、そんな軽い気持ちでいた。



だが、仮面を外そうにも、思うようにいかない。



男は、外し方を忘れてしまっていた。



どうしよう。



男は苦悩した。



外し方を思い出せないまま、窮屈さだけが増していく日々。



男は限界が近かった。



苦しい、つらい、そんなことばかり増えてゆく。



そんなある日、ついに仮面の方が堪えかねて、はじけて外れた。



男は苦しみから解放された。



しかし、男の周りにいた者たちの視線は白いものになっていた。



男はなぜそうなったのかわからなかった。



友人も、恋人も、男の前から消えていった。



男は悲しかった。



「お前らしくない」



この言葉は、男の心に深く突き刺さった。



男は再び仮面をつけてみた。



するとどうだろう。



以前のように男の周りに人が戻ってきた。



男は仮面をテープで補強し、もう一度毎日つけた。



しかし、窮屈なのには変わりない。



いつしか、その苦しさは男の心を蝕み、男は疲弊しきってしまった。



男の良さだったものは、とうの昔に失われてしまった。



男はこんな毎日に嫌気がさした。



そして、自らの手でその命を終わらせてしまった。



男は最後まで、どうすることが正解だったのかわからなかった。



ペルソナという人生の仮面は、喜びも苦しみも与えうるものである。

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