第15話 魔王
ハルトは村で荷馬車を購入して、旅のスピードアップをしていた。
街や村を渡り歩く旅人としての本分をいま進めていた。旅の終わりは魔王城とぼんやりと決めながら出てくる魔物や盗賊は問題なく自分の糧として処分して行く。
途中、やはり人間だからと襲われるが返り討ちにする。そして三週間が経とうとしたところでようやく魔王の城が見えてきた。
王城よりも小さくまとまっている気がした。
空は快晴、よく晴れている。
絶好の散歩日和だが馬車に揺られて魔王城の城下町に入ると宿を取る。
そしていの一番に魔王城へ行ってくると言い、神速を使うと魔王城までの道をただひたすらに上り魔王城の中を探して回る。
宝物庫には帰還の魔導書があった。それだけ収納すると魔王の場所へと向かう。
『解除』
「だ、誰だ!」
「待て」
魔王は王女だった。
「いきなり現れてすまない。人間、そして召喚されたハルトと言う」
今まで何度となく使ってきた大隊長からの手形を見せる。
「ほう、大隊長からの手形か」
「そうだ、今王国で召喚された勇者がこちらに攻めてくるかもしれない、が時間は稼げたと思う」
部長は必ず動くはずだからな。
「それはお前が何かしたのか?」
「あぁ、俺たちは帰還の魔導書を使って帰らなければいけない。だから王にいい様に使われていたが俺が盗んだからあちらにはもう無い」
「ほう、それを知った勇者たちは王には向かうことになるな」
「そうだ。だが時間稼ぎにしかならないだろう」
「そうだな、こちらにも帰還の魔導書はあるからな」
「だがそれはもうもらった」
「そうか、ならばここに顔を出す理由は?」
「そうだな、帰還の魔導書はまだあるか?」
「さぁ、それはわからぬ」
「なぜわからないんだ?宝物庫にあったのに?」
王女は笑いながら言う。
「それこそ神の悪戯よ、召喚の魔法陣が王国にしか無いのと何ら変わりない、いつからあったのか誰も知らぬ」
そうか、なら答えは一つしか無い。
「魔王?なぜ魔王と名乗っている?」
「ふはは、おかしなことを聞く、魔人の王だから魔王に決まっておろう」
「それも神からか?王でいいだろ?」
「む?なぜそう思う」
「俺らの世界で魔王と言えば倒す標的だ。おかしいだろ?その標的に自ら名乗りを挙げていることが」
「ふ、ふはははは!そうじゃの!ならば我はこれから王と呼ばれよう」
「これで神の楔が一つ剥がれたな」
「クハハッ!面白いでは無いか!神の意思に歯向かうその姿勢はとても面白い!」
「だろ?神は見ているはずだ!これから変わるはずだ!」
「ハハハハハッ!見ておるか神よ!我は魔王ではなくなったぞ」
光が落ちて来た。
小さな光だったが国中に波紋の様に広がる。
「ほう、これが答えか?」
「何か変わったのか?」
「我の中にあった魔石がなくなったな」
「へぇ、みんなのもか?」
そうらしいなみんな驚いている。
「ハハハハハっ」
「クハハッ!こんなに笑うのはいつぶりか、我は魔王ではなくなった途端に人間になった様だ」
「そうみたいだな!これで戦うのが人間なのだから人間は愚かだ」
「クハハッ、そうはさせん!国王側に使いを出せ!停戦だ」
「ハハッ!それでいい!戦う理由がないのだからな!俺が言ってくる」
それなら俺が言ってくるか、どうせ戻るしな。
「そうか。それでは一筆書こうではないか」
「わかった」
俺はそれを持って王国に行くことになるから9人とはここでお別れだな。
手紙を預かると、王城を出てみんなの前に行く。
「ヒロト様?」
「みんなありがとうな、ここまでこれたのはみんなのおかげだ。だが、ここまででいい、俺は帰らないといけないから」
「そ、そんな」
「嫌です」
と泣かれるがこれはどうしようもない。
「ラル、ファリス、デビ」
「「「はい」」」
「これは心ばかりのお礼だ」
「そんな、では本当に」
「あぁ、俺はこの世界の住人ではないからな」
「わかりました」
涙を溜めているが大人の対応をしてくれるな。
「皆には世話になった!本当にありがとう!」
「「「はい」」」
「ではいつまでも元気でな」
俺はこれからレベルを上げて、王国に行かなければならない。
天は深く底の見えない宇宙へとつながってるはずなのにな。まぁ、神はいることがわかっただけで俺の旅は大満足だ。
俺はレベル上げをしながら王国へ向かう。
やはりこちらから行くと長い道のりだな。でも空を見上げて歩くのも悪くない。
どこまでも続く空を見ながら俺の旅は続く。
さて、宿屋は空いてるかな?
と街に入り宿屋で一泊する。
魔人の全てが魔石が無くなったことを不思議な現象としてしかとらえていない。
ただ、ツノの生えた人間となったのだ。
不思議なもんだな。
そして帰還の魔導書が読める様になっていたので読むと消えてなくなった。
俺の中には帰還の魔法が刻み込まれたのだ。
さあ、帰る前に一仕事しないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます