第16話 されど、空の深さを知る


 王国に着くのに一年掛かった。


 これでも急いだ方だと思うがどうだろうか?


 王国の城下町に入るといつもの様に活気が有る。いつもと変わらないのかな。


 王城に行く。


 王にしたらつまらない報告かもしれないが言わないわけにはいかないよな。


 『神速』


「あれ?王はいないのか?ってあれは勇者の風間先輩か、あははは、王にとって変わったみたいだね」

 じゃ王様は?地下の牢屋に向かうとやはりいた、王様に宰相に騎士団長にコーチ!

 コーチも牢屋の中か!さて、勇者はどんな判断を下すのかな?

 女子達は?あははは、ズボラで何もしてないじゃないか?

 他に見るところは部長は?

 騎士団長になっている様だな。何してんのこの人?まぁいいか。みんなやりたい様にやってるみたいだしここに一石を投じることにしよう。


『解除』

「やぁ、部長」

「?み、水野!お前は今頃なんで?」

「あははは、部長こそ何してるの?」

「お、俺は…それより今まで何してたんだ」

「これなーんだ?」

「ま、まさか」

「そう、帰還の魔導書だ。元魔王からもらって来たよ」

「そ、そうだよな!お前は俺たちを見捨てるわけないよな!」

「それはどうかな?」

「な、なんでだよ!」

「これを今から王に渡す」

「ま、まて!王は!」

「地下牢にいる王じゃないよ?勇者の風間先輩にだよ?」

「そ、それは本当か?」

「本当本当。でもみんなを連れて帰るかは知らない」

「??!待て!待ってくれ!」

「じゃあね!」

『神速』


 俺…じゃなくて僕はみんなにこのことを伝えた。もちろんコーチにも王様達にもね。


 最後に、


 『解除』


「やぁ、王様」

「!?…遅い帰りだったな水野」

「あははは、じゃあただいまかな?」

「あぁ、おかえり」

「それじゃあこれを」

 手紙と一緒に魔導書もプレゼントした。

「やはり持って帰って来たのか」

「僕にはもう必要ないからね」

「魔王、じゃなくて王からの手紙か、するとこの帰還の魔導書は」

「そう、あっちにあったものだ」

「分かった、では褒美を」

「あははは、今更いらないよ!だって僕は1人で帰るから」

「…お前1人で帰るのか?」

「そうだよ、これはいらないからあげただけだ必要ないなら燃やせばいいし」

「…」

「睨んだってどうしようもないよ?僕は1人で帰るからあとはがんばってね」

『神速』



 俺は城下町にいた。

「アーシャ!」

「ヒロト!」

「あははは、アーシャ久しぶりだね」

「本当にお前ってやつは!」


 アーシャとは久しぶりにあの宿で夕食を一緒に食べ、一夜を共にする。


「お前が行ってから色々変わったのは結局お前のせいだったのか」

「僕のせいじゃないよ?変わったのはみんなの方さ」

「俺はやめたんだな」

「僕は僕のままがやっぱりいいかな?って思ってさ」


「で?いつ帰るんだ?」

「まだもうちょいいようかな」

「じゃあ久しぶりに狩りに出かけるか!」

「そうだね」

「あーあとあの3人は結婚してな!」

「そうなんだ!じゃあ会うだけあっておめでとうを言っておこうかな」

「あぁ、そうしろ」


 結局はみんながみんな変わったんだと思う。



 井の中の蛙大海を知らず。


 僕らは狭い世界で生きている。でも、


 されど、空の深さを知る。


 そう、神様がいることを知ったんだ。



「じゃあねアーシャ」

「あぁ、お別れだな」

「忘れない」

「あぁ、忘れないでくれ」



 僕は帰還魔法を使った。



 あれ?今僕は水の中にいる。


 あははは、あの時に戻れたんだね。



 水の中に沈んでみる。


 あの時のままだが違うな、体が出来上がってるのがわかる。


 自分で培ったモノは反映されてるみたいだ。



 しかし綺麗だ。


 キラキラとしてる。


 僕は息が苦しくなり外の空気を吸いに上がる。


 プールから上がるとみんながいた。


「あはは、帰ってこれたんだね?」


「あぁ、あれから3年掛かってやっとな」

 みんな結構変わったみたいだな?


「そうか、僕は一ヶ月くらいで帰ってきたよ」


「だろうな、お前が一番だったみたいだからな」


「そう?まぁ、みんなお疲れ、僕はこの部活をやめるよ」


「あぁ、みんな辞める気でいる」


「なんで?あんなに仲良しだったのに?」


「色々あった。俺たちにも…色々あった」


「そうか、じゃあここでお別れだね」


「待て、お前は深さを知ったのか?」


「あはは、見える範囲しかわからないよ」


「そうか、色々悪かったな」



「いいよ、僕は誰も恨んでない」


 ホッとしている3人が見える。


「そうか、着替えて帰るか」


「そうだね」


 全員が着替えるがやはりサイズが合わないので買い替えかな?


 一番に着替え終わった僕が、


「みんなバイバイ」


 と言うと皆がホッとしている。


 そうして僕の冒険は終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る