第12話 部長


「ではここでゆっくりしてくれ」

「ありがとう」

 天幕内は俺と8人の魔人の女の子達でいっぱいになってしまったが横にさせてもらっている。

「ヒロト様、膝枕を」

「あ、それなら私が!」

「あら、私がもうしてましてよ?」

「あはは、ありがとう」

 少し寝てスッキリした頃、

 

「おいおい!なんか人間臭いぞ!」

「誰よあんたは!」

 魔人が入ってきた。

「あんたがヒロトか?冒険者にしちゃ強いんじゃねーのか?ちょっと俺と「お前は黙れ」

な!」

 間に大隊長が入る。

「悪いな、副隊長のシャウトだ、挨拶させろとうるさくてね」

「そうか、俺がヒロトだ、よろしくな」

 手を差し伸べると握り返してくる。

「おお!女に囲まれていいご身分だな」

 大柄な男だ、ツノも上向きで強そうだな。軍服を着崩して着ている。

「まぁな」

「ハハッ動じずかよ。まぁそれくらいなきゃ困るわな」

「何が困るんだ?」

「こっちのは血の気が多いし家族を殺されたやつなんかごまんといる。恨まれてんぞ?人間ってのは」

 そりゃそうだよな、戦争していると言うことはそう言うことだと認識はしている。

「は!来るなら斬るだけだ」

「そうこなくっちゃな!ここにいても意味がない!外に出るぞ」

「あぁ」

 と俺はシャウトについて行く。


「でどうすんだ?」

「俺とやってもらう」

「そうか、わかった」

 ちょうど中央に丸が書いてあるな。観客は軍人でいっぱいだ。

「ハハッ!負ける気なんてひとつもねえミテェだなぁ」

「当たり前だ!じゃなきゃ来ねえだろ?」

 と円の中に入ると雰囲気が変わる。シャウトの持ってるのは短剣だ。

「さあて、お手並み拝見と行こうか!」

「お手柔らかに」


「オラ人間!死ねよ」

「副隊長!やっつけちゃってください」

「うおぉぉ!次は俺だ!」

 とやじが飛んでくる。

「行くぞ」

 と素早い動きだが神速に慣れてる俺にとっては遅いな。

“キンッ”

「おっ!これは返すか!じゃあこれでどうだ!」

 シャウトはぐるりと回って喉を狙いに来るが“キンッ”と弾き返す。

「じゃあ俺からも」

 と掌底で打ち返すと“ドォン”と指で弾いた様に飛んでいく。

「クハハッ!おう俺の負けだし、まだ力も使ってねえんだろ?」

「あぁ。お前だって魔法使ってこねえじゃねえか」

「まぁ、人間相手だからな」

「こう見えて魔法もいけるぞ?」

「マジかよ!やべえ奴と戦ったもんだぜ」

 よく言うよ。得意な魔法も使ってないのに!

 はぁ。郷に入っては郷に従え、ここはお約束というやつかね。

「んじゃ、俺が負けたんだから俺に勝った奴がこいつに喧嘩売る権利があるってことな!わかったか?」

「「「はい」」」

「サンキューな」

 これで風当たりが和らぐな。

「別に!またやろうぜ」

「あぁ」

 本当に不器用な…

 

 そうして3日。

「そろそろ旅をつづけたいんだけど」

「じゃあ、私が着いていきますよ」

「私も」アミュ達が止めに入る。

「なんでみんなも?」

「危ないじゃないですか!」

「大丈夫だよ」

 昨日から旅に出ようと思ってるのだが中々出してくれない。

「みんなも村に帰らなくちゃ」

「私達の村はもうないのです」

「だからヒロト様と一緒に居させてください」

「いや、俺も旅をして回ってるからな」

「そんな」

「おいヒロト!多分お仲間さんだぜ?」

「は?」

 副隊長のシャウトが来て言う。

「仲間?」

「召喚者って奴か?」

「はぁ、仲間ではないが一応行こうか」

「仲間じゃないのか?」

「あぁ、あんなのは仲間とは言わない」

 水泳部員達を仲間と言えるわけがない。あれだけいじめられていたのだから。


「ほらあそこ」

 俺は前線に出ていた。

「ほんとだな。勇者はいないみたいだな」

「何?そうなのか?」

「あぁ、たぶん部長達だから弱いと思うぞ?」

 勇者が来てないのが心配したがこれなら問題ないだろう。

「おっ!こっちに気付いたみたいだぞ?」

「何か言っているな」

「別に何を言われても構わないけどな」

「ハハッ!だろうなぁ」

 部長達が騒いでいるな、俺に気づくと、こっちに走ってくるが魔法が放たれる。

「あはは!なんで避けねえんだよ」

 走ってきて避けずに当たるから感電していた。

「あいつらは馬鹿なのか?」

「まぁ、そうとも言うな、俺が話をつけてくるよ」

「そうか。じゃあ攻撃しない様指示するか」

「行ってくる」

 

「何してんだよ」

「な、な、な、」

 部長1人で来てるみたいだな。痺れて喋れないのか。

「ヒール」

「何してんだとはなんだ!お前は心配かけやがって!」

「なんの心配だ?」

「な、なんの心配って、おまえの」

「イジメの対象がいなくなると困るからか?」

「お、お前変わったな」

「当たり前だろ?死ぬか生きるかの場所だろ?」

「まさか人は」

「殺したよ?それが何か?」

「おまっ!ま、待てよ!」

「あー、あと帰還の魔導書は俺が持ってるから」

「な、な、なんだって!なんでお前が持ってるんだ!」

「王城から取ってきた」

「盗むなよ!それがないと」

「まぁ、帰れないだろうな。あとこれ戦争だから普通に相手は人だぞ?」

「なぁにぃー!じゃあ俺たちは人殺しを」

「させられることになるんじゃないか?」

「お、おま、そんな他人事みたいに」

「俺に取っては他人事だからな」

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