第15話 再会


 ピロンという通知音に僕とかなくらは視線を向ける。


「まさか落合から?」

「おっ。そのまさかだな」


 落合からの返信は『うん。まぁ、ボチボチ』である。


「かなくら。僕のことは悟られないように会う約束を取り入れてくれないか?」

「また無茶な」

「頼む。こんなことかなくらにしか頼めないよ」

「仕方がないな。今度何か奢れよ」


 キリッとした表情になったかなくらは僕の意志が通じたようだ。

 最初は世間話をしながら今度会わないか、と話を持っていく。

『今、ちょっと立て込んでいるんだよね』とやんわりと断る文章が送られる。

 ただ会おうと言っても何か理由が欲しい。


「私と愛華の関係性ではそこまで気軽に会うのも変だな。何か無いか? 小高よ」

「そうだな。こう言う時は……。相談があるって言えないかな?」

「相談?」

「ほら。僕もかなくらに相談があるって言ったらこうして会ってくれたじゃないか。こんな感じで誘い出せないかな?」

「んー。まぁやってみるけど」


 かなくらはメッセージを送る。


『実は愛華に相談があってさ』

『相談って?』

『んー。結構深刻な話で出来れば直接聞いてほしいかな』

『へー。私に相談って珍しいね。もしかして恋愛系の相談?』

『まぁ、そんなところかな。直近で会える日あるかな?』

『そう言うことなら時間を作れなくもないよ』


 そんな感じで会う流れに持っていく。

 そして明確に会う日が決まった。

 二日後の十九時でオフィス街にあるファミレスである。


「文面じゃ分からないけど、少し警戒している感じがするね」

「うん。でも来てくれるんだな。落合」

「小高は都合いいの?」

「まぁ、定時ダッシュすればなんとか」

「私、その日は休みだから平気」

「じゃ、当日頼むよ。かなくら」

「それはいいんだけど、お腹空かない?」


 その誘い文句に察した。


「分かった。何か奢ろう」

「やりー。流石、小高」

「ただし、高い店は無理だぞ。牛丼くらいで」

「分かっていますよ。ゴチです」


 その日、かなくらと食事をして解散となった。

 そして二日後のことである。

 定時まで一時間を切った頃だ。


(よし。このままいけば無事に定時で上がれそうだな)


 フワフワした気持ちで自分の仕事をこなしている時である。


「ねぇ、小瀬くん。ちょっといいかな?」


 椎羅は僕の席まで来て言った。


「はい。なんでしょうか」

「急で悪いんだけど、残業頼めるかな?」

「え? 残業ですか?」

「小一時間程度なんだけど、ちょっと手伝ってもらえると助かる」

「えっと、そうですね。手伝ってあげたいのは山々なんですが……」

「嫌なの?」


 何かを察したように椎羅は睨むように言う。


「いえ、嫌と言うわけではないのですが、生憎仕事の後、急用がありまして」

「急用?」

「あ、その。高校時代の友人と会う約束がありまして……」

「ふーん。それなら仕方ないわね。いいわ。別の人に頼むからあなたは定時に上がりなさい」

「いいんですか?」

「当然。いくら上司でもこっちの都合で残業を強要することは出来ないからね」

「ありがとうございます」

 なんとか残業を避けることができて定時で上がれた。

「すみません。お先失礼します」

「お疲れ様です」


 そそくさと僕は事務所を出てかなくらの待つファミレスへ足を運ぶ。


「かなくら!」

「おう。小高」

「落合は?」

「まだ来ていないよ」

「そうか。じゃ、僕は離れた席で見守らせてもらうよ」

「うん。私はここで夢華を待っている」


 僕が到着してから数分後、落合夢華とかなくらは入店した。

 二人は僕の座る席から真後ろの位置に座る。

 落合と僕は丁度背中合わせになる立ち位置だ。

 マスクとメガネを掛けて軽い変装をしているが、バレないかヒヤヒヤしていた。

 頼むぞ。かなくら。と僕は祈りながらドリンクバーのジュースを飲む。

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