第66話 新人魔女に届いた蜂蜜色の丸薬(2)
そう声を発して気づいた。いつもならばリッカの起床と共に、すぐに姿を現すはずの使い魔のフェンがどこにもいないのだ。
「フェン。起きてる? 頼みたいことがあるのだけど」
リッカは再び声をかける。しかし返事はない。
一体どうしたのだろうかと、リッカが首を傾げた時だった。ホォっと、先ほどのフクロウが小さく鳴いた。まるでリッカの注意を引くかのように。
フクロウの思惑通り、その声を聞いたリッカはそちらへ視線を向け、フクロウの存在を思い出す。
どうも注意力散漫になっているようだ。まずはこの子を拭いてやらなければ。フェンのことはそれからだ。
リッカは一度固く目を瞑ると、気合を入れなおすように両頬を叩き、それからタオルを取りに行こうとして――。
またもや崩れ落ちるようにしてその場に座り込んだ。もう自分で自分の体がわからない。
リッカはそのまま仰向けに寝転んだ。天井を見つめながら思考する。
自分はどうしてしまったのか。何故ここまで体が言うことを聞かないのか。まさか何か病気なのだろうか。
そんな不安が頭をよぎる。だがそんな不安を払拭するように、またしてもフクロウが一鳴きした。
床に横になりながら、リッカは目だけを動かしフクロウを見る。すると、ぐっしょりと濡れた羽毛の間から、青い宝石のようなものが見え隠れしていることに気がついた。
(あれはもしかして……)
リッカは直感的にそれがなんなのか理解し、重たい腕をフクロウへと伸ばした。すると、リッカの意図を理解したのか、フクロウがトトッとリッカの指先に近づいてきた。リッカはそっとフクロウの首元の羽毛を掻き分けてやる。
そこには小さな飾りがあった。この青く透き通った石には見覚えがある。リゼが使役している獣たちが首元につけているものだ。
(間違いない。この子はリゼさんからの使いで、ここへやってきたのだろう)
リッカはそう確信すると、なんとか上半身を起こし、フクロウをじっくりと観察する。よく見ると、フクロウの片脚には小さな袋らしきものが引っかかっていた。
何だろうかとリッカがそれを取ろうと手を伸ばすと、フクロウは大人しく片脚をリッカの方へ差し出してきた。フクロウの脚からそれを外し、中に入っている物を取り出す。それは手紙と、蜂蜜色をした飴玉のような物だった。
まずは手紙を開く。中には綺麗で丁寧な文字が並んでいた。
“ジャックスから話を聞いた。市販の魔力回復薬を使用したそうだな。体調はどうだ?”
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