第30話 新人魔女と白紙の魔術書(6)
薬草の群生地に着くと、リッカは早速素材採取を始めた。必要なのは、月華草、星屑茸、風鈴花、それから粘土質で質の良い土だ。ここでは草花を採取する。どれも簡単に見つけられるものなので、すぐに手に入れることができた。
リッカは集めた素材を鞄の中に入れる。ちなみに、リッカが持っている鞄は革製で丈夫なものである。大きさはリッカが肩から下げて丁度良いサイズ。しかし、中には驚くほどたくさんのものを入れることができる。
拡張魔法を施したそれは採取には欠かせないアイテムだ。たくさん素材を採取してもどんどんと入る。だが、重さはほとんどない。風魔法を施し、少しだけ浮いた状態にしているので、重量がリッカの肩にのしかかることはないのだ。
グリムはその鞄に目を向けると、感心したようにうなった。
「随分と便利なもん持っとるなぁ」
そんなグリムの言葉に、リッカは照れたような笑みを浮かベる。
実はこの鞄はリッカが自分で作ったものだ。もちろん、普通の道具屋では売っていない。リッカは自分で使うための物は、大体自作していた。
道具屋で売られている品にも便利な物はあるのだが、リッカはそれよりも自分の魔力を使って何かを生み出すことが好きだった。
そんな話をしながら、以前精霊の水晶を採取した洞窟へとやってきた。召喚素材の中で最も重要な素材である粘土質の土を手に入れるためだ。
洞窟内で粘土質で適度に湿った場所を探す。すると、あっさりとその場所が見つかった。そこでリッカは鞄から取り出した大きな袋に必要な量の粘土を入れていった。
その後、リッカたちは再び工房に戻った。そして、いよいよ召喚を始めることになった。
まずは月華草、星屑茸、風鈴花をすり潰す。次に、それぞれの粉末と粘土を自身の魔力を少しずつ注ぎながら練り合わせ、一つの団子状にする。最後に風魔法を使ってそれを乾燥させれば準備完了だ。
リッカは真剣な表情で作業を進める。その様子を横目に見ながら、グリムはフワァと大きな欠伸を一つした。
最終工程の風魔法で粘土を乾かし終えると、リッカはふうと息を吐いて顔を上げた。
乾燥しきった粘土は小さな白い球体へとその姿形を変えていた。リッカはその球体を両手で包むようにしてゆっくりと持ち上げた。
球体はトクントクンと鼓動のような振動を伝えてくる。まるで生きているようだ。
リッカはそれを目の前にかざすと、そっと目を閉じた。
(使い魔さん、わたしのもとに来てくれますか?)
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