第29話 新人魔女と白紙の魔術書(5)
(リゼさんの魔力……)
目を閉じ、神経を研ぎ澄ませていく。指先から魔力を放出するようにイメージしながら、リッカは少しずつ魔力を注ぎ込んでいった。すると、すぐに変化が現れた。
「あっ!?」
「おっ、どうや?」
「な、なにかに当たった……?」
驚きの声をあげるリッカに対して、グリムはとても楽しげだ。
「どんな感じや?」
リッカは自分の手元に目を向ける。筆記帳がぼんやりと輝いている。そして、中心部には何色にも色を変える光の塊があるような気がした。
「これはリゼさんの魔力……?」
「おお! 一発で掴むとは、さすがやなぁ!」
感心するように褒めるグリムに視線を向けたリッカは、驚きに目を見開いた。
「グリムさん……」
「ん? どないしたん?」
不思議そうな顔をしているグリムに、リッカは恐る恐る問いかけた。
「あの、グリムさんも光って……」
不安そうなリッカの言葉に、グリムは一瞬ポカンと口を開けてから、豪快に笑った。
「アッハッハ! 当然や! わいもリゼラルブの魔力を与えられてるんやから」
「あ、そうですね……」
ホッとした表情を見せるリッカに微笑んでから、グリムは言った。
「そんじゃ、次はいよいよ術式解読やな! リゼラルブの魔力を感じたまま、もう一度それを開いてみぃ」
「はい」
リッカは小さくうなずくと、リゼの魔力をしっかりと認識したまま、筆記帳の表紙を捲った。
しかし、何も起きない。目の前に現れた頁は相変わらず白紙のままだった。首を傾げるリッカに、グリムが苦笑いを浮かべる。その様子に、リッカは失敗してしまったのかと焦った。
パラパラ、パラパラと頁を捲っていく。何頁も続く白紙にリッカが途方に暮れかけた時、頁を捲るリッカの手が止まった。
「あれ、ここだけ……」
そこには他の頁とは違い、はっきりと文字が記されていた。
『使い魔召喚』
「グリムさん、これ……」
リッカが驚いた様子で声をかけると、グリムはニッと笑顔を見せた。
「よっしゃ! 術式が見えたみたいやな!」
「はい。でも、どうしてここだけ?」
「その答えは簡単や。その頁の魔術が今のあんたに最適だからや」
「えっ?」
「まあ、気にせんでもええわ。今はとにかく、この術式をやってみようや」
「はい!」
リッカは勢いよく返事をする。それから、『使い魔召喚』の頁をじっくりと読み込んだ。
「どうやら素材が必要そうですね?」
「よっしゃ。採取に行こか」
リッカは嬉しそうな顔をしてうなずいた。リッカたちは工房を出て森へと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます