二十四章 パラグラフリーディング
成海はテニスの森公園のまえに立っていた。有明単探社の打ちあげの途中で抜け出してきたのだ。工藤葵が来るのを待っていた。成海は彼女に告白するつもりだった。
しかし、緊張のあまり、落ち着かない。現実逃避するように、けさの電話を思い出していた。沼田からの電話だった。犯人が逮捕されたあとの話だった。犯人は正直に事件のことを証言しているらしい。無事に解決したことが伝えられる。
成海の周囲は、日常にもどっていた。日常の象徴とも言える、葵があらわれる。ふたりは卒業した小学校を見るという名目で待ち合わせをしていた。ビッグサイトへと向かった。
ビッグサイトの東側にある庭園で足をとめた。葵は成海と同じくらい緊張していた。彼女も成海に告白するつもりだったのだ。
成海はふと、藤堂の予言を思い出した。誘導されるかのように、恋心がふくれあがる。
成海は葵の告白を構いもせずに、自分から愛情を告げる。彼女は戸惑いながらも受けいれた。ふたりは、有明単探社にもどろうとするが、葵ひとり、立ちどまった。葵から愛情を伝えられる。それはただのことばではなく、水槽の水をかえようした真意だった。
長く長く、とまっていた告白のつづきだった。
葵は成海よりもまえに、成海よりも強く、恋心を抱いていたのだ。
ふたりは、物語の終わりになって、ようやく、お互いの恋を成就させるのだった。
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