二十三章 パラグラフリーディング

 成海は容疑者たちのまえで、四つの殺人事件のことを話した。寺崎と三浦が白い蠍の構成員だったことを伝える。容疑者たちはゴミ袋を使って、盗みが行われていたことを知らなかった。この盗みは、犯人にとっても知らない事実であり、その暗躍が証拠へと繋がっていた。

 成海はまず、三浦の殺しから話しはじめた。天井裏の五指の痕跡は、犯人による仕掛けだったことを説明する。容疑者のうち、密室を誤認することができたのは、ひとりだけだった。アリバイ崩しを成し遂げ、犯人の名前を告げる。一つ目の推理だった。

 成海の推理は、終わらない。つぎに、寺崎に対するばらばら殺人の謎へととりかかった。寺崎の死体は犯人によって、移動されていた。その移動によって、余水吐につまり、氾濫の原因になった。犯人は誤魔化したと考えていたが、じっさいには、食い違いが生まれており、みずからの犯行を示してしまった。

 最後は、桜井の事件である。犯人は桜井を殺害し、証拠隠滅を図ったが、そのゴミ袋は成海たちが回収済みだった。成海はシンポジウムの内容をなぞるように、科捜研の報告を読みあげる。その発見は、ひとりの犯行を裏付けていた。決定的な推理だった。

 犯人は罪を求める。三人を殺した動機を語り出した。大石の血縁者である犯人が、寺崎と三浦の口論から真実を知り、復讐したのだ。犯人は刑事たちに連行される。成海はセントラルスケジュールを見た。すべての手掛かりを回収したことを確認し、三枚の紙を破った。

 連続殺人事件は、解決されたのである。

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