二十章 パラグラフリーディング
成海は藤堂が勧めたとおり、葵と合流した。いっしょに夕食を食べたあと、船堀タワーの展望室へとあがった。江戸川花火大会を見るためだった。十分に、花火を楽しんだ成海たちは、展望室の定員をへらすために、途中でおりた。
タクシーで葛西臨海公園へともどる。大観覧車にのった。葵は友人である亜紀の勧めを受けて、かつて、トラウマとなった事件について、語りはじめた。小学三年生のころ、成海が水槽を落とし、メダカを殺した事件だった。
成海はそのあと、生徒の保護者から問題児扱いを受けて、学校内で孤立してしまった。葵はメダカがすでに死んでいたことを把握していたにもかかわらず、いままで黙りつづけていた。
それを後悔していたのだ。しかし、じっさいの成海はちがった。葵の行動を知っていたうえで、意図的に水槽を壊したのである。葵は成海の真意を知り、もともとの恋心のうえに、尊敬と感動をおぼえた。いっぽうの成海は、葵が当時の話をしたことで、いままでにない、事件の手掛かりをえていた。
犯人がどうして、芦ヶ池に死体を落とし、あとになって、ばらばらに斬り刻んだのか、理解したのである。成海と葵は、お互いに晴れやかな気分となった。ホテルへともどることにした。事件を解くための謎は、すべて、そろったのである。成海は解き手として、覚醒したのだった。
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