十九章 パラグラフリーディング

 犯人にとって、事故死のほうが都合はよかったにもかかわらず、なぜか、死体を回収し、ばらばらにしていた。その理由がまるで、わからなかった。

 さらなる手掛かりをえるために、引きつづき、芦ヶ池のなかを調べた。芦ヶ池の余水吐は一メートルほどの幅だった。たしかに大木が溜まったら、氾濫が起きる状況だとわかった。

 芦ヶ池の正面には、清掃道具を置いている小屋があった。成海は小屋のとなりに積まれている大木を調べた。ひとつだけ、大木とはことなり、柔らかかった。黒い藻を落としてみる。それがクロマグロのぬいぐるみだとわかった。成海は証拠品として回収した。

 桐生に関連して、多目的研究センターの外に気になる場所があった。窓のまえに立った。茂みに張られた防虫ネットをたしかめた。防虫ネットは、桐生が事件当日の昼間に張ったものだった。桐生への疑いがふかまる。

 しかし、成海の言及もそこまでだった。あと一歩のところで、真相をつかめない。藤堂は成海を休ませるためにも、工藤葵との合流を勧めた。ホテルにもどる途中、見張りの警察官と会った。警察官から犬飼が逮捕されたという報告を受ける。白い蠍の活動資金を押さえることができるようだ。

 藤堂は葛西署にもどり、取り調べの参加をきめる。ふたりはわかれる。成海は精力的に働きつづける藤堂を見て、尊敬の念を抱くのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る