十八章 パラグラフリーディング

 成海は犯人が構成員である犬飼のあとを追って、白い蠍の別拠点へと辿り着く可能性に思いあたった。見張りの警察官に電話をする。犬飼らしき人物がバイクで逃走したという報告を受けた。犬飼は記者会見を知って、リーダーの桜井と合流するにちがいなかった。急ぐ必要があった。

 成海は前日に踏みこんだ廃工場の所有者を調べる。登記簿には、べつの土地が記載されていた。車を走らせる。その場所には消防車がとまっていた。

 現場は火事になっていた。犯人の去ったあとである。

 成海たちは廃工場から桜井の死体を引きずり出した。現場にあったゴミ袋はすべて、燃え尽きていた。藤堂と沼田は落胆するが、成海は逆に、きのう、回収したゴミ袋のなかに証拠品がのこっていることを確信した。科捜研に分析をたのみ、多目的研究センターの裏側へと向かった。成海は屋上のフェンスが壊れていたことを気にかけていた。芦ヶ池の氾濫に関係すると考えていたのだ。その甲斐もあって、芦ヶ池のそばで、寺崎の腕時計を発見する。

 寺崎は分解されるまえに、屋上から突き落とされたのだ。

 しかし、この事実は、おおきな矛盾をあらわしていた。犯人は死体を一度、遺棄したにもかかわらず、あとで回収し、ばらばらにしたことになるからだ。藤堂は、いまだにふえつづける謎に、思い悩んでいた。刑事の責務が藤堂を苦しめていたのだ。

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