十七章 パラグラフリーディング

 成海の希望的観測は外れていた。犯人はすでに、白い蠍の別拠点を突きとめていた。強い殺意をもって、森のなかを進んでいた。犯人のさきを白い蠍の構成員が走っていた。

 構成員の辿り着いたさきは、廃工場だった。成海たちの踏みこんだ廃工場とは、べつの拠点だった。周囲に強い雨がふりはじめる。視界を悪くしていた。犯人は雨音に紛れ、廃工場の裏から、室内の様子を伺った。ふたりの男が話し合っていた。

 ひとりは自由の身になった桜井だった。桜井は白い蠍の資金を隠そうとしていた。流血の金魚祭りに話がおよぶ。桜井が大石の殺しにかかわっていたことを知り、殺意が宿る。桜井がひとりになったところを狙って、背後から刺殺した。

 桜井の絶命を確認すると、ほんらいの目的であるゴミ袋の処分に動いた。廃工場の反対側にある事務室で、目当てのゴミ袋を見つけた。ゴミ袋の山に火をつけた。

 犯人は証拠品の処分を確信し、廃工場を去るのだった。

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