十三章 パラグラフリーディング

 藤堂は驚きと困惑が隠せなかった。成海が指摘したとおり、天井裏の指紋とばらばら死体の指紋が一致したのである。藤堂の反応はとうぜんだった。この事実は、犯人がすでに死人であり、幽霊となって、三浦を殺害したことになるからだ。藤堂はこの矛盾を解消するために、犯人が自己抹殺を企み、みずからの身体を遺棄したという推理を試みた。

 藤堂の期待に応えるように、成海は否定する。成海は、すでに、ばらばら死体の正体をつかんでいた。多目的研究センターの研究員、寺崎恭吾だと断言したのだ。

 ここで、はじめて、四肢連続遺棄事件が多目的研究センターの殺人事件と関連していたことが判明する。成海は寺崎が緑川大学の卒業であることに着目していた。

 藤堂に流血の金魚祭りの調査をたのんだ。藤堂は調べ直すことを約束する。葛西署へともどった。成海もホテルにかえり、工藤葵と合流した。夕食を食べ終えたあと、部屋にもどった。

 しかし、なかなか、寝付けずに、資料ファイルを読み漁った。成海は相川会を調べているうちに、四肢の遺棄されている場所のちかくに、相川会のアジトがあることに気がついた。のこりのアジトはひとつしかなかった。今井街道沿いである。

 つぎに、遺棄される場所が小松川インターチェンジだと突きとめる。交通量の多くなるいまが、絶好の時間帯だった。成海は遺棄の現場を押さえるために、あわてて、ホテルを出るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る