十二章 パラグラフリーディング

 藤堂が絶望に打ちひしがれているなか、成海はひとつの手掛かりを見つけていた。衛星実習室には特殊な照明スタンドが置かれていたのだ。それを目にした瞬間、ひとつの謎が解けた。

 成海は焦るように、水族園へと走り出した。時間がないことに気がついたのである。走りながら、藤堂に事情を説明した。藤堂は成海にたのまれて、法医学教室に電話をする。タトゥーのなかに、発光成分が含まれていたことがわかった。成海の予想どおりだった。

 成海たちは警察官と協力し、水族園を駆けまわった。ようやく、処理場に運ばれる寸前のゴミ袋を見つける。ゴミ袋には犬飼が三浦にわたした新聞があった。

 新聞にはとある仕掛けが仕込まれていた。成海は水族園のブラックライトを使って、新聞内の暗号を解きあかした。そこには白い蠍による盗みの指示が書かれていた。

 藤堂はあたらしい手掛かりをえられたことに喜ぶが、成海はさらなる推理を進めていた。天井裏の指紋が五人の容疑者のものではなく、最初に遺棄された死体のものだと告げたのだ。死体は法医学教室に置かれていた。電話だけで確認ができる。藤堂は信じられない頼み事だと思いながら、電話をかけた。すぐに報告がかえってくる。

 藤堂の反応は、その信じられない事実を体現するものであった。

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