十一章 パラグラフリーディング

 成海と藤堂は、多目的研究センターの裏にある展示ホールへと向かった。展示ホールの控え室には、容疑者の宇田川室長のほかに、水質環境研究所の所長である武部と緑川大学の教授である今岡小百合がいた。三人を交えて、話をきくことになる。宇田川は、三浦が殺害された時刻、ふたりといっしょにシンポジウムに参加していた。

 しかし、宇田川の姿は目撃されていなかった。藤堂は当日のシンポジウムが動画上の操作だけだったことに着目し、遠隔操作によるアリバイ工作を疑った。

 しかし、パソコン上にマクロ操作の痕跡はなかった。宇田川の犯行は不可能だったことが判明する。

 藤堂は容疑者のなかで、亜紀が本命だと考えていた。楽観的な様子で、休憩室にもどった。同僚の報告を受ける。成海は藤堂が電話しているあいだに、衛生実習室を調べることにした。

 しかし、成海の想像よりもはやく、藤堂が電話を終えて、もどってきた。藤堂は落胆していた。亜紀の共犯者だと考えられていた木野は、すでに刑務所に収容されていたのだ。これで、五人の容疑者は、全員、三浦を殺害できなかったことが判明してしまうのだった。殺人事件の捜査は、難航の真っ只中にあった。

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