九章 パラグラフリーディング

 多目的研究センターの休憩室で、桐生への尋問がはじまった。桐生はかつて、建築関連の会社に勤めていた。天井裏の構造にもくわしく、内部の部品を外したあとに、組み立てることが可能だった。桐生ならば、天井裏にはいらず、室内から細工することができた。

 成海たちはガラス窓を置いている倉庫へと移動した。藤堂は桐生が現場のガラス窓を交換することで、密室を出入りしたと推理した。桐生のアリバイにも問題があった。桐生は公園内の清掃を終えたあと、事務室にいたと証言していた。

 しかし、渡辺洋子という女性が否定する。追いこまれた桐生だったが、上司の長谷部が意をけっして、証言をした。その時間帯、桐生と長谷部は、べつの施設にいた。違法な談合を試みていたのだ。桐生は談合の事実を隠そうとしていたのである。長谷部の証言の確認がとれる。

 桐生の犯行はむずかしかった。

 成海は、帰り際、洋子から同僚である犬飼の話をきいた。犬飼は目に見えないペンで、新聞に書きこんでいたらしい。新聞を巡る謎がふかまりつつあった。

 多くの疑問を生みながらも、成海たちは、つぎの容疑者である秋田のもとに向かうのだった。

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