第3話 3枚目の写真(手記?)


 さらに続きまして、3枚目の説明といきましょう。

 こちらがいよいよ最後となりますゆえ・・・どうか飽きたなどと言わずに、耳を傾けてほしいものです。


 映っているのは――?これはこれは・・・またしても私ではなく、別人の姿ではありませんか。


 

 おい!この野郎!結局、蓋を開けてみれば自分が映っていないものばかりではないか!のも、たいがいにしろ!


 

 と、早くも文句を言いたいところでしょうが、しばし落ち着いていただきたいのであります。

 こちらの写真がいったいなぜこの私を表す材料のひとつなのかをこれから説明いたしますので、激昂げっこうなどしないでください。私からの切なる願いです。


 まず、映るのはひとりの少女。


 マイク片手に、優雅な立ち居振る舞いで歌をうたっているのであろう姿がそこにはあります。


 少女は天真爛漫な様子で、カメラにしっかりと、これもまた笑顔で視線を投げかけております。

 また、少女は顔はもちろんのこと、着ている衣装も含めて非常にかわいらしい様子がありありと伝わってきます。


 つまるところ、誰もが人目を惹く容姿をしていると言えましょう。

 それこそ、すれ違ったらつい振り返ってしまうほどの。


 はいそうです。

 少々恥ずかしながら言わせてもらいますが、この少女こそが私にとっての女神なのです。


 女神というのは、眺めているだけでも『影』の多くて薄い私に光を差し伸べてくれます。


 影にいる人間からしてみたら、このようなには強い憧れめいた気持ちが胸の内にあるのです。


 もっともこれは陰キャ――いえ、影にいる人間に大変よく表れる性質とでも言いましょうか――は、やたらめったにひとつの物事に熱中または追求しすぎるきらいがありますゆえ、己を制御する必要が時にはあったりします。


 かくいう私も、何度『中毒』になりかけたことか・・・


 そのため、語り出したら止まらない。歯止めがきかなくなる。

 もの静かだったのに、打って変わってまるで嘘のごとくすらすらと饒舌じょうぜつに。


 現に私は今この写真の少女に関して、無駄に多く蓄えたを他人に話したくて仕方がない衝動に駆られております。が、わざわざそれをひけらかす真似はしません。

 

 ご理解ください。私をはじめ、影の支配下にいる人間はそのような人種なのです。


 

 ——と、これにて3枚目の写真の説明を終えることとします。


 3枚全ての説明を聞き、あなたはいったいどんな気持ちになりましたか?


 、私としてはこれ以上『廃人』にならぬよう生きていきたい所存でございます。





「——てなわけで、俺のは終わり。どうだった?」

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