第2話 2枚目の写真(手記?)
続きまして、2枚目です。
こちらになります。ご覧ください。
わんぱくな少年が、ゴールテープを切る瞬間がそこには収められています。
かけっこなのか、はたまたマラソン大会なのか、とにかく少年はひどく嬉しそうというか、
こちらの写真を一目見た人のほとんどは、きまって開口一番、こう口にするのです。
――あぁ、ここに映っている少年はきっと何らかの大会で優勝でもしたのでしょう、と。
ですが、違うのであります。
何を隠そう、実は優勝を手にしたのは、この私なのです。
いやいや・・・冗談はよしてください。デタラメを言うにしたって、ほどがあるではありませんか・・・
いったい、どんな確証があって優勝したと?
明らかに嘘だと分かってしまえば、それこそ嘘とは呼べませんし、自らが見苦しい思いをするだけですよ・・・
などと思われるのも無理はありませんが、事実なのです。
繰り返します。映っている少年よりも先着し、本当の意味での栄冠を手にしたのは、この私であります。
しかし、無常にもそれを証明する確固たる証拠がありません。あんまりです。
これは、いわば私だけ——いや、私しか知らないという言い方の方が正しいのでしょう。
そうです。『影』が薄くて多い人間であるがゆえ、先にゴールテープを切った人がいたことに周囲は気づかなかったのです。誰ひとり。
はたして、こんな事態があってもよいのでしょうか・・・
さすがに、心が引き裂かれるような気持ちに陥りました。
同時に、誰にも祝福してもらえない、孤独な寂しさも感じずにはいられませんでした。
ですからこの写真を切り抜き、代わりに私の姿を貼り付けて偽装してやりたいくらいの欲望に駆られたことも多々あるのです。
お気を確かに!!
あなた、大丈夫ですか???
なんていう風に人間性を問われても仕方がありませんが、私はそれほど認めてほしかったというのもまた事実なのです。
——と、こんなところで2枚目の写真の説明を終えることとします。
2枚目は、映るべくして映らなかった、私の歓喜の瞬間でした。
次は3枚目の写真の説明へと進みます。
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