『ぼっち代表選手』と化していた俺が導かれたのは仮想現実という世界でした

葵 京華

第1話 1枚目の写真(手記?)


『影』が、多くて薄い生涯を送ってきました――・・・


 まずは手元にある、こちらの3枚の写真をご覧ください。


 これらはいつ見ても、私という人間性をよくよく示していると言えましょう。

 

 では、1枚ずつ順を追って説明していきます。




 1枚目に説明するのは、こちらの写真になります。


 学校内で撮られた、いわゆる学級写真と言われるものでしょうか。


 写真に映る生徒は皆、笑顔を浮かべているのが分かります。一人ひとりの表情を細かく読み取ってみても、それぞれが楽しげな様子であります。


 しかし、どういうことでしょうか。


 全体を通して写真を見てみますと・・・おや?

 何やらが隅っこに映り込んでいるではありませんか。


 こちらは何でしょう?


 判断しようにも、その部分だけがちょうど的を射たかのごとく、見ることができません。

 ぼやけ、かすれているからであります。

 

 ですが、必死さは伝わってくるのです。

 

 いかにも、カメラに収まるために慌てて駆け込みました、と物語っているような。

 どうやらそれがあだになってしまったのでしょう。シャッターを切る瞬間ぴったりに素早い動きをしたがために、こんな風に、無様な姿で映る羽目になったと思われます。


 そうです。『影』が多くて薄い者ともなると、学級という集団に身を置いていては半分ほど存在を忘れられてしまう。

 やれやれ、まったくひどいものであります。

 

 とはいえ、これではとても顔も見えたものではありません。


 あぁ無様な姿。なんと恥ずかしいこと。

 顔から火が出る、あるいは穴があったら入りたい、とはよく言ったものです。

 何度、この写真を破り捨てたい衝動に駆られたことか、分かりません。

 

 それでも捨てなかったのはなぜなのか。繰り返しにはなりますが、この写真が私という人間性のありのままをよく表しているからに他なりません。


 ここまで説明していて、もうすでにご存じかもしれませんが『影』の多くて薄い人間にとっては、所謂いわゆる存在感の主張こそが全てとも言えるのであります。



 ——と、こんなところで1枚目の写真の説明を終えることとします。


 1枚目はぎりぎりのところで映った、ピンボケ写真でした。


 次は2枚目の写真の説明へと進みます。

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