澄み渡る空に
ここに来た頃はやたらオリフィエルと話したものだけれど、ここでの暮らしにも大分慣れてきて、僕はひとりでいることは苦にならないから、たまにオリフィエルと話せたらそれでいいや、なんて。
オリフィエルの後にくっついて歩くユカって女の子がいるんだけど、この子がやたら煩くて僕は苦手なんだ。オリフィエルが
「今度来るときはユカも一緒だけど、気にしなくていいからね」
って言ってたけど、気が重いな。あの子とにかく元気でやたら話しかけてくるから面倒なんだよ。
「君の名前、私がつけてあげる!」
って笑顔で言われたときは仰け反ったね。何言ってんの?って思わず聞き返しちゃった。
「僕は夕貴。奥村夕貴」
名乗ったら名乗ったで「夕貴」「夕貴」って煩いし。呼び捨てにすんなって何回言っても
「いいじゃん、堅苦しいことは言いっこなし!」
ってこれまた煩くてやたら明るい。ユカは親に殺されたようなものってオリフィエルは言っていたけれど、本当なのかな。虐待される子ってもっと暗いイメージがあるんだけど。
取り合えず次会うときは「久しぶり。元気にしてた?」って言葉を交わして、あとはユカの話に付き合うことにするよ。面倒だけど、オリフィエルが連れてくるっていうなら断るわけにいかないからさ。
天高く馬肥ゆる秋。
秋の空はいいね。1日中見ていても飽きないよ。澄んだ空に浮かぶ雲。その雲の上に僕はいて、澄んだ空気に身を任せてこの世界を泳いでいる。
冬がきて春になり、夏になって。それでも僕はきっとここにいる。何故ってこの場所を気に入ってるからさ。たまに訪れてくれるオリフィエルを待ちながら、過ぎゆく時に揺蕩うのも悪くない。
まだら雲の隙間から 梅林 冬実 @umemomosakura333
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