超強敵⁉ 氷炎淫魔将軍と百合の花園!(3/5)
かくして、女淫魔2人によるステータス開示能力によって、私の恥ずかしい事実を赤裸々にされてしまった私は蒼天冷姫フィンブルとして……ではなく、露出度が激しく誰がどう見ても変態としか思えないような黒衣に身を包まされて戦いに臨んだ。
だがしかし、私は堕天隷姫エクリプス・フィンブルという最強の戦闘形態になったというのにも関わらず、苦戦を強いられていた。
「リリム! 作戦はいつも通りなのだわ! 好きにやるのだわ! お姉ちゃんが全部カバーしてあげるからじゃんじゃん燃やしなさいなのだわ!」
「了解。姉さんの方こそ、その気まぐれな援護射撃をいつも通り好き勝手にやっていい。僕はその援護に合わせる。姉さんに劣るとはいえ綺麗な氷の支援をよろしく頼むよ」
双子の淫魔は高いエーテル量と翼による機動性にものを言わせて、安全圏の空から一方的に立体的な機動から織りなす縦横無尽の射撃を行う。
(……っ! 武器が銃って……! 道理で服装が軍服基調な訳ですか……!)
双子にして、氷炎を操る2人の魔族の武器はまるではなく、本当に近代の武器を思わせるようなレールガンを片手で持てるように小型化させたモノ。
そして、その鈍器を抱えながらも速度を落とすことなく彼女らは空を自由自在に飛び回る。
メズキメで慣れた私にとってはその速度は十二分に目で追える速度ではあるけれども、そんなモノよりも警戒すべきはその銃から放たれる光線だ。
その場で収縮し、集中する極寒の冷気。
その場で膨張し、拡散する灼熱の熱気。
エーテルビームとでも名付けるべきだろうか。
恐るべき速度と威力を有したエーテルで形作られた光線が、まるで嵐のように、矢継ぎ早にどんどんと私に向かって放たれる。
「……くっ……」
前から襲い掛かる炎を避けようとすれば、死角から放たれた氷が回避行動を邪魔させる。逆もまた然り。
右からこちらに向かう氷を捌こうとすれば、真反対の方向からやってくる炎がそれを邪魔をさせる。その逆もまた然り。
息つく間もなく死角から延々と、軽々と放たれる重々しい攻撃が降り注ぐというのに対し、こちら側のエーテルの操作が少しでも狂えば大きな損傷を受けてしまう。
(……こいつら……通常攻撃みたいな気軽さで【魔槍・氷柱】と同等の攻撃を仕掛けてくるっ……!)
息の合い過ぎている高速戦闘に、その速度から繰り出される超威力の攻撃の嵐。
圧倒的なまで火力と速度を前にした私は回避と防御を行い続ける事だけが精一杯で、一向に攻撃に転じる事が出来ずに防衛に甘んじている始末。
自分の周辺のエーテルの速度を操る事で何とか高速で飛んでくる光線を見切る事が出来て、首輪から補充され続けるエーテルのおかげで耐久戦は問題ないが、向こうのエーテル量がそもそも高い所為なのか、一向に息切れする気配さえ見られない。
(……強い……! こいつら、頭はアレな癖にっ……! 今まで戦ってきた相手の中で一番強いっ……!)
単純な強さでは魔王軍四天王としての立場を有するメズキメの方が上だろう。
だがしかし……そもそも、彼女はあの戦いで本気ですらなかった。
だからこそ、淫魔の翼で宙を駆け、淫魔族特有の高エーテルから放たれる重い一撃と敵意を与える彼女らは、今まで戦ってきた魔族の中で一番に強いと断言してもいいぐらいだった。
(……何とか……早く攻撃しないとっ……! このままじゃ、負けるっ……!)
まず人数の時点で負けている。
これは仕方がない。
しかし、そのハンデさえも凌駕してしまえるほどの力を、この堕天隷姫エクリプス・フィンブルは有している。
例え、魔王軍戦闘員が1000人束になってかかってこようが、恐ろしい魔獣が100匹匹やってこようが、人語を理解する知性を有する魔族や怪人が10人同時に襲い掛かってこようが、その数的不利を一瞬にして蹴散らしてしまうほどの暴力的な力を堕天隷姫エクリプス・フィンブルは有している。
……そう、有している筈なのだ。
だというのに、あろうことか彼女たちはその暴力を具現化した強さすらも真っ向から退けてみせる姉妹愛によって相殺してしまっているのである。
その姉妹愛から繰り出される名連携を前にした私は、2対1で卑怯、というよりもあんな連携が出来るだなんて凄すぎると感心せざるをえないのだ。
(……1人だけなら……1対1同士の戦いだったら……何とか戦いになれる筈なのにっ……!)
苦し紛れに、敵の攻撃を少しでも牽制させる為に必殺技である【魔槍・氷柱】を放ってみる、けれども。
「くははなのだわー! こいつやっぱり馬鹿なのだわー!」
全力で放った訳ではないけれども、それでも直撃すれば大損害は免れない闇の一撃。
それが空中にいる青髪のサキュバス……リリスに直撃したというのに、ダメージの形跡が全く見られないどころか、平然とした表情のまま大爆笑している始末。
(……くっ、やはり効きませんか……! 少しは痛がってもいいのにっ……!)
であるのならば、炎の攻撃を繰り返すサキュバスに氷槍をぶつけるものの……避ける価値すらないと言わんばかりに彼女は私の渾身の一撃を受け、爆発に巻き込まれたというのにも関わらず、黒煙から現れたその姿は無傷であった。
「残念。確かに先ほどの不意打ちよりかは威力はあるようだけど、その属性を扱う以上、僕らには万が一にも届かない」
私の攻撃を無効化されてしまう現象は赤髪の妹であるリリムにも当てはまるようであり、結果として地上にいる私が唯一有している空への攻撃手段の悉くが完封されてしまう。
「先ほどわたくしのエロステータスオープンを見たでしょうに! 文字通り、わたくしたちに氷属性の攻撃なんて通用しませんわー! どれだけ格上であろうが、氷属性というだけで無効化させられるのだわー! 大切な妹に苦手な氷の攻撃を通させてなんかやらないのだわー! カチンコチンに凍らせてやるのだわー!」
「もちろん、僕のおかげで姉さんの弱点である炎属性は帳消し……とはいえ、炎属性を扱えない君には関係のない話か。それじゃ、さっさと燃えてくれ」
無念であるとはいえ、私の一撃はやはりどれも無効化にされてしまい、その返礼と言わんばかりに降り注ぐ熱線への対処で忙殺されてしまう。
であるのなら、この刺々しく物騒な魔杖を直に相手に殴りつけるしか攻撃方法が残されていない訳だが、空中に飛んでいる彼女たちに地面にいる私の打撃が届くはずもない。
(……やっぱり、あの青髪のサキュバスが1番邪魔……! アレさえいなくなってくれれば……でも、どうやって……⁉)
話の前後をまとめるに氷属性の彼女が健在である以上、私の唯一の攻撃手段である氷槍による投擲攻撃が永遠に無効化にされてしまう訳で――。
(――くっ! 考えさせる時間さえ与えさせてもくれませんかっ……!)
少しの思考で動きを鈍らすことで生じるその隙を見逃してくれるほど、彼女らは甘くはない。
次々と飛来するバズーカ砲の弾丸を思わせる氷と炎の塊。
瞬きする間に私を貫くであろう速度を有し、スナイパーライフルから放たれた如き細くも爆発的な威力を有する炎と氷の光線。
そして、バルカン砲のように放たれる無数の氷炎の嵐。
まるで戦場を具現化したが如き銃撃たちがたったの数秒で全方向から、私1人だけを対象に襲い掛かってくるのだ……!
(……駄目……このままじゃ、負けるっ……!)
蒼天冷姫フィンブルや堕天隷姫エクリプス・フィンブルとしての基本能力であるエーテル操作はもちろん空間に含まれるエーテルも対象とするし、この忌々しくも黒く強い闇の力を有している以上、体内エーテルは文字通りの無尽蔵。
であれば、大気内に含まれているエーテルを丁寧に操作し続けて、空間内に襲い掛かってくる弾速や威力を殺し、前々から貼っている障壁で凌ぐのは簡単だと、そのセリフが口に出来ればどれだけ良かった事か!
この行為は神経そのものをすり減らす行為と同等であり、長時間続ければ続けるほど、しかもそれぞれが全く違う弾質である以上、すり減らされる神経も集中力も当然ながら数秒ごとに跳ね上がる。
つまり、失敗してしまう確率が無視できないぐらいに大きくなってしまう事と同意義なのである……!
「……っ! しまっ、ミスっ――きゃあああああああああああ⁉」
たった一度の攻撃を許してしまった私の背後から、超級の防御結界がなければ皮膚が一瞬にして燃えてしまいそうな程の高熱の弾丸が直撃する。
そして、その痛みを一瞬でも味わってしまった私がエーテルの操作なんて出来る訳もなく、たった0.1秒の隙を晒した私の身体に数百数千もの弾丸が殺到し、無数の爆発を繰り返す。
炎、氷、炎、氷……1つ1つは歯を食いしばって何とか我慢して痛みを我慢できる程度の威力であるのだが、それが大量に積み重なってしまえば当然ながら激痛になってしまい、耐えられる筈もなかった。
「……がっ、あっ……ぐっ……!」
そうして、ようやく攻撃の嵐がやり過ごした私であるのだけど、堕天隷姫エクリプス・フィンブルの頑丈な黒衣のおかげで何とか人の形を保つ事が出来ていたし、服にも燃えただとか破れただとか一切の損傷も見られない。
だがしかし、余りの痛みの所為で身体が動かない。
いや、動かせなかった。
「……足が、凍って、動けないっ……⁉」
気が付けば、地面に横たわる私の脚は凍らされて、地面に文字通りに釘付けにされてしまっている。
手は自由ではあるけれども、有していた筈の魔杖は爆発に巻き込まれて遠くに飛んでしまい、今の状態ではとても手に届かない。
すぐさまそんな拘束を振りほどこうと体内のエーテルを総動員させようとするも、延命や防御にエーテルというエーテルを回してしまっていた所為で今の私が有するエーテルはほぼゼロに等しい。
こうなってしまえば、首輪や全身の呪いのドレスから注がれるエーテルによる回復を待ってから、何とかするしか方法がなく……そんな私の考えを妨げるように2人の女淫魔が私の眼前に降り立った。
「くははなのだわー! 無様なのだわー! 氷属性のクセに氷で足止めされるだなんて滑稽なのだわー!」
「今更だよ姉さん。今までに1人でもいたかい、僕たち相手に無様で滑稽じゃない最期を迎えた敵なんて」
折角、空から地面に降りてきたというのに。
折角、手に届く距離にいるっていうのに。
私は惨めに地面に這いつくばるしか出来なかった。
「……くっ、殺せ……!」
「殺す? 冗談は止めてほしいな魔法少女。僕と姉さんは不用意な殺生をしない主義でね。それに君はこれから僕たちと一緒に気持ちいい事をする宿命だ。古くから敗者は勝者のものだ。丁重に大切に扱うとも」
「それは本当にそうなのだわ。おかげ様でこちらのエーテルは大量に浪費してお腹がペコペコ……どこかの誰かさんで補充しないとなのだわね……?」
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