超強敵⁉ 氷炎淫魔将軍と百合の花園!(2/5)

「クハハなのだわー! 人間界のかき氷って美味ぇのだわー! 氷なのに味がするのだわー!」


「姉さん。あそこで売ってる肉まん美味しいよ。店員さんが僕たちを見てそそくさと避難したから有料なのに無料でね。流石はサキュバス双子姉妹の頭脳派担当にして炎属性担当の僕! フードロスは環境に悪いからね! 責任を持って火事場泥棒である僕たちがこの路上販売されていた食材たちを美味しく頂くとしよう!」


 ――何だろう、アレ。

 

 エーテルを超高速化させ、蒼天冷姫フィンブルとして現場に辿り着いた私であるのだが、日曜日の影響か路上販売が行われていた形跡が見られる東京の公園の上空にて、かき氷をガツガツ食べる存在と、肉まんをパクパク頬張る存在が目に入ってしまい、私は戦意が削がれ掛けていた。


(……あの2人、なんか良い笑顔を浮かべながら呑気にかき氷と肉まん食べてますね……)


 どうやら彼女たちは露店の食事で夢中になっている所為で私にまだ気づいていない様子であるらしかったので、まじまじと様子を見てみる事にしてみたのだが――雰囲気からしてみて、サキュバスだろうか?


 というのも、背中から悪魔の翼を生やし、女性としてはかなり美形と、サキュバスの特徴を確かに有しているからという浅はかな理由からなのだが。


「美味ぇのだわー! 美味ぇ、の、だ、わ……? っく……! あ、頭が……痛い……! まさか……毒⁉ リリムー! リリムー! お姉ちゃんを助けてー! 双子の妹でしょー⁉ 姉を助けるのが役目でしょー⁉ 自分の声で頭がすっごく痛いのだわー⁉ わたくしはまだ死にたくねぇのだわー⁉」  


 現在進行形でかき氷を大量に食べた際で起こってしまう頭痛に苦しんでいるのは女性は青髪で、黒を基調とした軍服ワンピースを着こなしている淫魔の少女だった。


「はふはふ……はふはふ……はふはふ……! あ、ごめん姉さん。僕は肉まんを食べるので忙しくて手が離せないんだ。姉さんはそのまま死んで地獄にいるであろうメズキメ様の手伝いをしてあげて」


 両手で肉まんを有し、見ているだけでも肉まんが食べたくなってしまう程の食い意地を見せている女性は赤髪で、先ほどの女性と同じ黒を基調とした軍服ワンピースを身にしている。

 

「死にたくねぇのだわー! まだメズキメ様がいるであろう地獄に堕ちたくねぇのだわー!」


「もぐもぐ……ぱくぱく……はふはふ……!」


(……何ですかね、コレ。取り敢えず様子見がてらエーテル弾を撃って、地面に堕としたところで錫杖でタコ殴りにしますか、うん)

 

 とはいえ、自分たちから人間界に攻め込んで呑気に食事を楽しんでいる彼女らの都合は私には関係ない。


 大声で騒ぎ立て、人々の休日を台無しにしてしまった傍迷惑な双子の女淫魔に向けて、私は特訓で生み出した必殺技である【魔槍・氷柱】を上空に向けて全力で発射した。


「ぎゃああああ⁉ わたくしのかき氷が地面に落ちたのだわ――⁉」


「ぐわああああ⁉ アツアツの肉まんが僕の喉に直撃した――⁉ おのれ! 敵は僕並みの天才頭脳派と見える! 肉まんを使って火傷させるとは……なんて頭が良いんだ!」


(……っ⁉ 噓でしょう……⁉ あいつら、っ……⁉)


 間抜けなセリフが聞こえたが、それでも私は驚きを隠す事が出来なかった。

 というのも、槍状の氷塊をぶつけて無数の爆発を起こさせる私の必殺技は文字通り、相手を必ず殺す技であり、今までに遭遇してきた魔族という魔族を滅ぼしてきた。


 そんな自慢の大技が、……そんな事実に私は驚きを隠せなかったのだ。


「くははなのだわ! ついに現れたのだわね、メズキメ様の仇!」


「敵ながら見事な不意打ちだ。とはいえ、相手が少し悪かったね」


「我ら! 風を司る魔王軍四天王メズキメ様の直属眷属! 詰まるところ片腕&片腕!」 


「ついでに片足&片足! おまけに片翼&片翼! 更におまけに片乳&片乳! 即ちコレ頭部以外全部メズキメ様! つまり9割メズキメ様! 四捨五入したら実質的に僕たちはメズキメ様!」 


(……? ……? …………?)


「わたくしの名前は氷風左翼淫魔将軍のリリス! ツッコミ担当!」


「僕の名は炎風右翼淫魔将軍のリリム! ツッコミ担当!」


(……っ! ボケしかいないっ……⁉)


「我ら! 魔王軍空軍双大将にして2人しかいない淫魔将軍2人! サキュバス最強のメズキメ様が選んだ精鋭中の精鋭! つまり超精鋭なのだわ! 偉いのだわ! 頭がいいのだわ! なんか凄いのだわ! うん! 凄いのだわ! 凄いという事は凄いのだわ!」


「えっちな事にしか興味がなくて魔界で一番戦争と政争にも興味がないサキュバスの頭脳と理性に叡智が形になったのが僕ら! そんな僕らに殴ったり燃やしたり凍らせたり撃ったりだなんていう天職を紹介してくださったメズキメ様の仇!」


 ……なるほど。

 分かりたくもないが、分かってしまった。

 

 こいつら馬鹿だ。

 青髪のサキュバスは見た目通りの馬鹿だけど、赤髪のサキュバスに至っては物凄く頭が良さそうなクールな喋り方をしてるのにすっごく馬鹿だった。


「……ってぇ⁉ どーしてわたくしたちをそんな可哀想な目で見ているのかしら⁉ ……えっと、メズキメ様を倒したであろう憎っき女の名前がぱっと出てこない……えーとえーと……何だっけ………こう、喉まで出かかっているのだけれども……!」


「姉さん、アレの名前は『そういうの大好きチンチンブルブル』だよ。人の名前を忘れたりするのはいくら敵とはいえ失礼だよ姉さん」


 人の名前をそんな風に間違える方が流石に失礼じゃないだろうか。


「そう! それ! そういうの大好きチンチンブルブル! 名前おかしすぎなのだわ! キラキラネームもここに極まれりなのだわ! 笑い殺すつもり満々の名前なのだわ! お笑い草なのだわ!」


「……えっと、私の名前は蒼天冷姫フィンブルなんですけど……」


「フィンブル……? あれ、おかしいのだわ? 目の前がいるのがそういうの大好きチンチンブルブルじゃないって言うのなら……ひょっとして人違いなのだわ? だとしたらごめんなさいなのだわ。さ、リリム、一旦魔界に戻りましょうなのだわ」


「騙されないで姉さん。あれは高尚な罠だ。敢えて『そーめんだいすきフィンブル?』とかいう他人の名前を出すことで矛先を変える罠だ。俗に言うところのオレオレ詐欺だよ姉さん。この前姉さんが馬鹿みたいに引っ掛かった詐欺の類だよ、アレ。架空請求だよ架空請求」


「っ……! 許せないのだわ……! 貴女が私の全財産を奪った悪党なのだわね……⁉ 絶対に許さないのだわ……! ラーメン大好きフェスティバル……!」


 ツッコミが、ツッコミが……! 

 ツッコミが足りなさ過ぎる!


 待って! ねぇ待って!

 私はどうすればいいの⁉

 ねぇ、本当にどうすればいいの⁉

 めちゃくちゃ強そうな2人なのに、頭が本当に馬鹿!

 すっごく馬鹿!

 救いようがないぐらい馬鹿!

 人の名前を覚えられないぐらいに馬鹿!


 ねぇ、これどうすればいいの……⁉

 的確なツッコミをしない私が悪いの⁉

 私が悪いのかなぁ⁉

 そうなのかなぁ⁉

 メズキメ何とかしなさいよ!

 貴女の部下でしょう、アレ⁉


「……あの、お2人はサキュバスなんですよね……? えっと、本当にあの魔王軍四天王メズキメの部下なんですか……? あの女の部下にしては、余りにも頭が……いえ、その、愉快すぎませんか……?」


「聞いたかい姉さん。どうやら麵類が大好きな彼女は僕たちがメズキメ様の部下だという事を疑っているらしい。まぁ最近メズキメ様に会ってないから顔を忘れかけているけれど。どういう顔してたっけ、僕たちの上司」


「ふふふ! ならその証拠を直に見せてあげるのだわ! 見なさい! サキュバスの秘奥義! エロステータスオープン!」


「説明しよう。エロステータスオープンとは対象の隠したい情報を強制的にさらけ出す女淫魔専用魔術。つまりは相手に辱めを与える為だけの禁じられた呪い。それを自分相手に使うのは天才にしか許されない発想だ! 個人情報開示は本当に危ないという事を身を以て教えてあげるよ……!」


 そう言いながらサキュバスの双子たちが手をかざすと同時に……ゲーム画面で何度も見たような情報の羅列が宙に浮かび上がる――。




━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━




名前   :リリス

種族名  :アークサキュバス

レベル  :50/99

年齢   :15歳


所有特殊スキル

①【冬空の主】

自分含む味方への氷属性の攻撃を完全無効化。


②【魔族結界 LV2】

エーテルが含まれていない攻撃を完全無効化。

ただし、衝撃だけは防げない。


③【氷魔体質】

氷属性が得意になるが、炎属性が弱点になる。

熱々のごはんを食べるだけで死にかける。


④【羽ばたくもの】

空中にいる時限定で、地面にいる相手からの攻撃を大きく減少させる。


⑤【アイスクリーム頭痛】

かき氷を馬鹿みたいに食べた所為で全力が出せない。

尚、自身の頭の悪さとは関係ない。




初体験相手;リリム

メズキメ様の所為で胸が弱点。


頭がどうしようもなく弱い。

熱いモノを食べると火傷する事を発見した時、自分が本気で天才だと思うレベルのアホ。

彼女の頭がアホな理由にメズキメ様ご自身が関係ないと公言するレベルでアホ。

ちなみにメズキメ様はレベル130。


最近、誰かに全財産を盗られた。




━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━




名前   :リリム

種族名  :アークサキュバス

レベル  :51/99

年齢   :15歳


所有特殊スキル

①【夏空の主】

自分含む味方への炎属性の攻撃を完全無効化。


②【魔族結界 LV2】

エーテルが含まれていない攻撃を完全無効化。

ただし、衝撃は防げない。


③【炎魔体質】

炎属性が得意になるが、氷属性が弱点になる。

冷たい食べ物を出されるとついつい残しがちだが、フルーツは別。


④【羽ばたくもの】

空中にいる時限定で、地面にいる相手からの攻撃を大きく減少させる。


⑤【肉まん】

お腹が肉まんで満たされた所為で全力が出せない。

今、彼女は人型の肉まんになったのだ。




初体験相手;リリス

メズキメ様の所為で脚が弱点。


頭が強そうで実は強い訳がなかった。

アホそうに見えるがアホ。

メズキメ様も救えないぐらい壊滅的な頭脳の持ち主。

ちなみにメズキメ様は22歳。


最近、姉のリリスから大量の財産を巧妙な手口で盗んだ。




━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━




「ツッコミどころが多すぎるんですよ貴女たちっ――⁉ ねぇどこからツッコめばいいの⁉ 私をどうするつもりなんですか貴女たちは⁉ 私の頭を疑問符だらけにして爆発四散させるつもりなんですか⁉」


「ふっ、これでわたくしたちが本物だというのが分かったなのだわ?」


「馬鹿なんですか⁉ 馬鹿なんでしょう⁉ ねぇ馬鹿でしょう⁉ 貴女たち本物の馬鹿でしょう⁉」


 まさか敵に自分たちの弱点や強みを赤裸々に明かすヤツがいるだなんて、想像できる筈もない!


 とはいえ、先ほどの私の魔槍・氷柱が無効化されてしまったのは、どうやら青髪の馬鹿淫魔による特殊技能によるものらしい事が分かった……というか、分からされたというか……まぁ、敵の情報を知るのは大事だけど……大事なんだけどっ……!


「僕たちの恥ずかしい情報を見せたんだ! 今度は君が開示する番だ! 姉さんが僕がやらかした情報を見る前に君の情報を見させて目を逸らさせる! なんて天才なのだろうね僕は! という訳で喰らえ! エロステータス強制オープン!」


「――えっ⁉ ちょ、や、やめっ――⁉」




━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━




名前   :蒼天冷姫フィンブル

種族名  :初代魔王エクリプスの転生体

レベル  :10+30/999

年齢   :14歳


所有特殊スキル

①【蒼天冷姫フィンブル】

変身すると自分のレベルを30加算するボーナスを付与。

現在適用中。


②【堕天隷姫エクリプス・フィンブル】

変身すると自分のレベルを100加算するボーナスを付与。

現在適用外。


③【淫魔女王の淫紋】

淫魔女王の所有物にして、何度も淫魔女王に愛され、淫魔族の性的発散に利用できると判断された固体であるという証明を意味する紋様。

行動終了時に高確率で自分を強制発情させ、性的攻撃への抵抗値を皆無にさせる。

現在は特殊技能で弱体化させている。


④【淫魔女王の口紅】

淫魔女王に身体を委ねてしまった事を証明する口紅。

淫魔族の化粧を施された事で自身の体内エーテルを淫欲に強制変換させる事で戦う為の力を奪い、戦闘行為が出来ない身体にへと作り変えていく。

現在は特殊技能で弱体化させている。


⑤【エクリプスの首冠】

初代魔王エクリプスの転生体であるという証明する首輪であり、淫魔族が有する魔界の秘宝にして、最凶最悪の拷問道具。

初代魔王に相応しい身体に仕立て上げる為に、常日頃から堕天隷姫エクリプス・フィンブルに強制変身させる為のエーテルを首元から注入し続ける。

抵抗に失敗すると無理矢理に堕天隷姫エクリプス・フィンブルにへと強制変身してしまう。

また、首輪を嵌め込まれた所有者は淫魔族に対して絶対的に服従してしまうが、初代魔王エクリプスの幼体である堕天隷姫エクリプス・フィンブルになれば命令の絶対服従効果は無効化される。

一度身につけてしまうと解除不可能。


⑥【菴輔°縺寄生譬ケ莉倥¥】

何ら問題なし。無視してよい。




初体験相手;なし


メズキメ様に可愛がられた所為で全身が弱点。


自慰行為を先週に21回した。

最近、メズキメ様の御姿を頬を赤らめながら無意識についつい目で追いかけている。




━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━




「これでお前の弱点は筒抜け……って、1週間で自慰回数21回……⁉ バ、バケモノなのだわ……⁉ こんな性欲モンスターに勝てる訳ないのだわっ……⁉ というか名前がラーメン大好きフェスティバルじゃないのだわー⁉ 誰なのよ貴女ー⁉ というかえっちすぎるのだわこの変態女ー⁉」


「違っ……! これ違う……! 初代魔王にさせられるべく、無理矢理気持ち良くさせられて……! その熱を忘れる為に……! うぅ……! 見ないで……! 見ないでくださいっ……」


「頭が良さそうなのに実はえっちな事が大好きって……そんなの僕とキャラが被ってるじゃないか⁉ くっ……インテリで頭が良い天才キャラはどうしてどいつもこいつもえっちな事が好きなんだ……! 僕とキャラを被らせる気満々じゃないか!」


「違うんです……! 本当に違くて……! お腹の淫紋が熱くなると、仕方なく……! 我慢できなくさせられてっ……! ……くっ……駄目……意識しちゃうと……身体が熱くっ……! い、いや……やめてっ……! あの忌々しい姿に……身体が勝手にっ……!」


「正体現しやがったのだわ! 見なさいリリム! あんなえっちな黒い格好をしているヤツがえっちな訳ないのだわ! しかも、歴史書に出てくるような初代魔王様と同じ格好をしているのだわ! コスプレプレイなのだわ! ふけー罪? なんですけど! 他の国で一番偉い人になってコスプレえっちするだなんて流石に業が深すぎるのだわー⁉」


「うん、アレはやばいぐらいにギリギリの不敬罪だ! あのメズキメ様でもダッシュで殴るレベルでやばい! 見せてやろうよ、リリス姉さん! 僕たちの絆を! 100回ぐらい重ねた双子ックスで固めた絆であの変態コスプレ女を倒そう!」


「えぇ! 自慰行為しかやった事がない性体験クソザコ相手にわたくしたち、魔界一面白と喧伝される双子姉妹が負ける筈がないのだわ! ところで面白って肌が白いっていう意味でいいのだわよね?」


「そんな事よりも姉さん! 双子姉妹でヤり合うのも実質的にはオナニーじゃないかな!」


「黙れぇ……! お願いだからもう黙れぇ……! これ以上私の頭をおかしくさせるなぁ……! 本当に遠慮なくぶっ飛ばしますよっ……! この馬鹿淫魔どもっ……!」

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