大ピンチ⁉ 蒼天冷姫フィンブル 魔王軍四天王の魔手に堕つ!(3/4)
「……へ、変身……
口が勝手に動き、初めて耳にした名前を放つと同時に、私の首を覆う金属製の首輪に輝く紫色の結晶から光が漏れ、その光は次第にどんどん強くなり――気づけば私の全身を闇を思わせるような黒色の光で包み込み、視界すらも閉ざしていく。
(これ、蒼天冷姫フィンブルになる光じゃない……⁉ 無理矢理、何かに変身させられる……⁉)
悪を倒し、魔族を退ける正義の光ではなく、鋭い冷気を思わせるような闇の光。
どんなに相手が強大であろうとも自信をつけさせてくれるような、心強さなんて微塵もないような只々冷たくて暗いだけの闇の輝きが自分の身体を逃がさないように、制服姿の私を包み込む。
「いやっ、いやっ……! やめてっ……! とまって……! これ、なりたくないっ……!」
必死になって全身を包み込む闇から逃れるように身をよじり、力の限りを尽くすものの、昆虫の繭を思わせるように自分の身体に絡みつく闇の前には文字通り、溺れるしか出来なくて――ついに、変身が完了してしまった。
「……わた、しは……
(また口が勝手に……! 違う……私は、そんな低俗な存在なんかじゃ……!)
強制的にそれに変身させられてしまった私はその後、鏡に写っている自分の姿をそれとなく視界に入れたが……頭の中で思い浮かべていた最悪の予想通り、鏡に映った自分の姿は正義のヒロインではなく、蒼天冷姫フィンブルに顔と体型が似ているだけの別人だった。
(……噓。これが私、なの……?)
まず、和風の蒼天冷姫の白いコスチュームは、反転したかのように洋風の装いにへと無理矢理に変えられ、自分の真白な肌に良く映える蒼黒を基調とした魔装束を着せられてしまっていた。
当然ながら、敗北を証明する腹部の淫紋と、性的快感を教え込まれた事を裏付ける口紅に、隷属を示す闇色の首輪はそのままで……それ以外の蒼天冷姫としての特徴を有したモノは殆ど残っていない。
闇の中でも光り輝く青黒いロングヘアの髪は、何色にでも染まって汚されてしまうような白がかった銀髪にさせられ、髪型も自由に出来ないと言わんばかりに、黒色のリボンで縛られポニーテールに勝手に変化し、首輪の近くと低めの位置で髪をまとめられている所為で遠目から見れば髪が首輪のリードの様に見えなくもない。
流麗なサファイアを思わせるように希望で強く輝いていた筈の瞳は、瞳から光沢が消えて絶望を前に弱々しく光る蒼眼に変化し、口紅だけだったはずの顔面の化粧も更に多く施され、14歳の少女とは思えないぐらいの大人らしさと妖艶さをしたくもないのに勝手に演出させられる。
そして、青色に輝くティアラはいつしか蒼黒色の宝石で輝く刺々しいデザインの黒い王冠を模したヘイロー……天使の頭上で光り輝くような輪が、頭上に浮かんでは自分の頭の周りを囲み、嵌り、離れない。
(……いやっ……! 頭の中に、知らない何かがっ……⁉ 入ってこないで……! こんなの、頭おかしくなる……! これ以上、私をおかしくしないでっ……!)
王冠特有の重さはないけれども、その代わりに魔力で出来た黒冠から、何かしらのエネルギーがどんどん頭の中に流れてきて、今の自分と知らない自分が入り混ざり合い、無理矢理に新しい自分にされていくような感覚を、今までの自分が少しずつ消えていくような感覚に襲われていく。
(……くっ、それなら変身を一旦解除して……嘘っ、変身解除が出来ない……⁉ なんで⁉ どうして変身すら解けないの⁉)
最低最悪な事に、敵の前で無防備になる変身解除をしようとしたのに、その覚悟も虚しく、私の衣装は固定されたままであった。
原因は十中八九、この首輪だろう。
というのも、現に今の私は変身をしているではなく、変身させられている。
首輪から送られてくる補充用の魔力……それも汚染した魔力、淫呪に似た魔力が半永久的に身体に注がれ、変身と発情を強制的に維持させるのだ。
(なら、力尽くでも……! このっ、離れて……! くぅ……! 首輪はともかく手袋すら脱がすことも出来ないなんて……⁉ こんなの、絶対おかしいっ……!)
腕の関節から指先まで覆う長手袋は、取り返しのつかない事をしでかした自分の業を思わせるような漆黒の色で、冷たくもさらさらとした肌触りはいつまでも身につけていたいぐらいに心地いいが、絶対に脱がさないと言わんばかりに肌にぴっちりとフィットし、離れない。
(やだっ……! 外れてっ! 外れてってば! 外れないのなら破れてよっ……! こんな恥ずかしい格好……!)
魔法少女のスカートは消失し、脚部を外に曝け出す。
生足であった筈の箇所には黒色のガーターベルトを装着させられ、太ももから足の指先の肌を真黒に染め、脚を細くするように黒く締め上げる魔装は本当に自分の肌と一体化したように貼りつき、どう足搔いても取り外すことは叶わない。
(っ……⁉ 危な……⁉ くっ……バランスを取るのがやっと……!)
女の子の憧れとも言えるようなガラスの靴は、先ほどのガーターベルトと一体化している高いヒールの靴にへと変質させられており、靴だけ脱がすような真似を絶対に許してくれなかった。
しかも、ヒールの高さは2倍近く高くさせられ、細長すぎる所為で立ち続けるのも難しく、走るに至っては絶対に不可能と、ヒールを慣れていない私に対する結束着としては充分過ぎて、バランスを保とうと悪戦苦闘する私を、まるで他人に見られたいが為に動かない存在にへと無理矢理に仕立て上げる。
(……うぅ……! 恥ずかしいのに、隠せない……! 抵抗せずに大人しく視られるだなんて、そんなの嫌なのに……! 嫌なはずなのに……! 身体がどんどん熱くなって……!)
ガードの固い蒼天冷姫の衣装でも背中は少し見えてはいたが、流石に上半身は丸見えではなかった。
髪型をポニーテールにさせられてしまった事で、浮き出た肩甲骨や引き締まった背筋と生肌までも見せびらかしてしまい、恥ずかしさと屈辱も隠し切れない。
では真正面の方はと言うと、ホルダーネックのように両肩と両脇を露出し、ボディラインを強調させ、チャイナドレスを思わせるような魔装束の両側のスリットは余りにも深すぎて、真横に至ってはがら空き状態で横から女性の下着が一目で分かるほどに露出が激しく、垂れた布はいやらしい湿気を孕んだ鼠蹊部と臀部の肌に吸い付いて離れてくれない。
また、着用者である私の肌に貼り付くだけでなく、生地を通して隠さずに女体を見せつける為だけに半透明で透けているシースルー構造の、ぴっちりとした黒い薄生地の材質で構成されている。
おかげ様で肌に直に刻まれた女性器を模し、点滅を繰り返しては全身に淫熱を送り込む下腹部の淫紋を隠すどころか、黒の色の所為で怪しく輝く淫紋を目視させやすくなる始末。
そして、14歳にしては大きい自分の乳房を更に大きく綺麗に美しく、人に見られる事だけを目的に整えられてから半透明の薄い生地の魔装束の中にへと閉じ込め、女性の隠すべき場所だけを必要最低限の小さいカップでギリギリに隠すという名目で胸を晒しあげる。
パンツは横から丸見えで、ブラジャーすらもなく、こんな女性のバストとウェストをいやらしく強調させ、女体を魅せつける女淫魔を象徴するような衣装で精神的な安心も、戦意や勇気を得られる筈が無く、尊厳という尊厳を踏み躙られた私は湿気を孕んだ息と共に涙を零していた。
「……いや……嫌だ……こんな服、嫌だ……戻して……元に戻して……」
頭のてっぺんから足の爪先まで、数多くの淫呪が仕込まれた呪いのドレスで着飾られた今の自分にあるのは、蒼天冷姫フィンブルとしての誇りを奪われた無力感と絶望感……そして、今すぐにでも快楽に沈みたいという闇のように暗い欲求だけだった。
「ふふっ、新しいえっちなコスチュームが泣いちゃうぐらい気に入ったようね、蒼天冷姫フィンブルちゃん。おっと、間違えちゃった。今の貴女は堕天隷姫エクリプス・フィンブルちゃんだったわねぇ?」
「……っ! メズキメ……! 貴女、本当に何がしたいんですか……⁉ 魔王軍四天王なら敵対する私を殺して然るべきでしょう……⁉」
全身という全身が強制的に呪具で覆われた私に淫呪は流れ続け、意識という意識を根こそぎ持っていこうとするけれども、それでもそれを与えてきた張本人を前にすると、今まで散々与えられてきた屈辱の怒りが募りに募り、淫熱でぼやけていた意識を覚醒させてくれる。
だけど、その覚醒も長くは続かない。
一瞬だけ正気を取り戻したとはいえ、すぐさま新しい淫熱が私を襲い、折角手にした正気をすぐさま溶かしては衣装通りに無抵抗で無力な少女に仕立てあげようとしてくる。
そんな淫呪に苛まれながら抵抗の視線を向けるも、物欲しげな視線に変えてしまう行為の連続を繰り返す私を見た淫魔女王は笑った。
「本当に知らないのね。自分が何者なのかどうかさえ。その恰好を見れば分かると思うのだけど」
「……今の、私の恰好……?」
「えぇ。私はただ、貴女を昔の姿に戻しただけ。と言っても、精々全盛期の100分の1程度でしょうし、記憶も無いから仕方ないかもだし……まだ未完成の幼体とはいえ悪に堕ちたコスチュームに王冠がある時点で察しが良いヒトは気付くと思うけれど、それは流石にノーヒント過ぎるわよねぇ」
「……何が、言いたいんですか……?」
自分が何者?
昔の姿?
全盛期?
記憶が無い?
王冠?
彼女が口にした内容は脈絡が無いように思えるが、点同士が線となって繋がってしまうのではないのだろうかという謎の不安があった。
……不安?
どうして、私は今ここで不安を覚える?
「ご存知の通り、私たち魔王軍は魔界を住処にして、魔王を旗印に活動する団体。だけど、魔界を作った魔王と今の魔王は別存在なのよね」
「……魔王は、2人いるとでも?」
「半分正解。魔界を作った魔王っていうのは、大が付くほどの魔王様。つまり、初代魔王様。当然ながら強くて偉いけれども、2000年前に死んじゃったのよねぇ。でも、初代魔王様の強さって文字通り、次元が違うのよ。それこそ、次元を超えて別の世界に転生してもおかしくないぐらいには」
そう告げると同時に、彼女は私に近づく。
私は思わず逃げようと後ずさるけれど、高すぎる靴のヒールに慣れない私が上手に逃げられる筈もなく、バランスを崩してしまった私は尻餅をついてしまう。
倒れ込んだ私に対し女淫魔はキスをするような、キスという行為だけでは済まさせない距離にまで顔を近づけ、ぞっとするような美貌を合わせ持つ極上の女体で私の身体の上に重ねるようにしな垂れかかり、淫熱で火垂る私の頬にいつまでも触っていたいぐらいに冷たくて気持ちいい手を添えてきた。
「エクリプス。初代魔王エクリプス。魔力……魔族におけるエーテルの操作を大得意とし、全ての魔族の祖である存在を創った伝説の魔王にして、魔の神。そして、女淫魔の永遠の頂点に君臨する絶対的な女魔王」
「……ま、まさか……」
「ふふっ、察しが良いわねぇ? そう。フィンブルちゃんはね、初代魔王エクリプス様の転生体なの。人間じゃなくて、私と同じ女淫魔なのよ」
「……嘘です……そんなの、嘘に決まって……」」
「本当。貴女はエクリプス。言うなれば、蒼天冷姫の貴女は偽物。今の貴女が本物なのよ、フィンブルちゃん」
信じられなかった。
だけど、不思議ときっとそうなのだろうという諦めに近い納得があった。
確かに、今の私の恰好は悪に堕ちた魔法少女というよりも、悪の女魔王だ。
それに3か月もの間こうして戦い続けたというのに、同年代の誰かが魔法少女の力に覚醒するだとか、他の星からやってきた可愛らしいマスコットキャラクターが現れるだとか、昔に見ていたアニメのような事は一切起こらなかった。
だから、私はこの3ヶ月の間ずっと、誰にも頼れないまま、たった1人で戦い続けてきた。
ずっと、ずっとずっと、1人で、何とかしないといけないと思っていた。
私は自分のこの力の事を、幼い日に見ていた魔法少女のようだと思っていたから、これはきっと魔法少女の力に違いないと思っていた……いや、そう思い込むことで思考するのを止めていた。
だけどまさか、諸悪の根源の力を使っていただなんて夢にも思わなかった。
「ふふっ。絶望した表情のフィンブルちゃんもかわいい。でも安心して? もっと愉しい事をしてあげる。フィンブルちゃんはこれから魔界に行って、大好きになったえっちな調教をたっぷり味わうの」
女淫魔の手が撫でるように私の頬を這い回り、その手は次第に服とは言えないような堕天隷姫エクリプス・フィンブルのコスチュームの中に侵入していく。
「貴女はこれから永遠に負け続けて、堕ち続けて、媚び続けて、隷属し続けて、魔王という名前のお人形さんになるの。それが蒼天冷姫フィンブルの最後の……堕天隷姫エクリプス・フィンブルの最初で最後のお仕事」
そして、彼女の手がついに女性の秘部のすぐ近くまで近づき、触れようとして――。
「――ようやく隙を見せましたねっ……!」
私は全身を覆う淫熱を振り切り、慣れないコスチュームに身を包まれながらも地面に落ちていた銀色の錫杖だったモノを……私と同じく変質してしまった闇色の杖を片手で拾い、今出せる限りの全力と魔力を振り絞って、私の身体に跨るメズキメに突き刺した。
~~~
悪堕ち系統は作者の性癖……ではありますが。
簡単に堕ちてしまうのは、性癖ではありません。
身体が悪に堕ちた堕天隷姫エクリプス・フィンブルもとい、心だけがまだ堕ちてない蒼天冷姫フィンブルちゃんに『がんばえー!』とか『悪に負けろー!』とか『闇に堕ちろー!』とお望みの良い子の皆様はフォローや★でフィンブルちゃんを応援のほど宜しくお願いいたします。
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