第69話 セルーナ

 電動ミルがうなりを上げる。

 コーヒーの粉が削られて、容器の中に山と降る。セルーナは俯いていた。


「僕はさ、アアスフィアが乱暴者だって思って疑わなかったよ」

「生物種から見て、精霊種は行動原理が分かりづらいからね」

「僕だって精霊種だった」

「それでも、感じ方は生物種に似通っていた。……そう、造られたのがお前だ」

「兄さんは悔しくないの」


 サッと頬を紅潮させたセルーナがハイシアへ振り向く。

 短い髪が円を描くように浮き上がって、雪のように静かに降りていく。


「アアスフィアと比べて悔しがるのなら、彼に失礼だ」

「ははは、確かに。アアスフィアは僕よりよほど精霊らしかった」

「その言い方は……」

「やめろって? 慈悲深さや思慮深さでもアアスフィアに負けてたのに?」

「……少なくとも、今のお前はよく考えて動けるだろう」

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