第68話 過日2

「リプル! アンタまたアアスフィアに寄ったりして!」


 アアスフィアの背に乗って楽しそうに跳ねる金人魚リプルは答えない。


「あのね、危ないから降りておいでよ。そんなことよりあたしとお化粧しましょう! アンタすっごく綺麗なのにもったいない!」

「ミルキ、リプルへの押し付けはやめなさい」

「愛ある心配です!」


 通り過ぎざま注意するハイシアに向けて、ミルキが反論する。

 掌底でアアスフィアの顎を揺らしながら、ハイシアは叫ぶ。


「アアスフィア! 俺は今から授業があるから! 続きはまたあとで!」

「リプル! 心配したんだから、ほらいくよ」


 不満げな鳴き声こそ返されたものの、攻撃はなくなる。

 リプルはミルキを無視して、アアスフィアに乗っかっている。


「ありがとう、アアスフィア」

「悪い子ね!!」

「……ミルキ。リプルはアアスフィアの背中で日向ぼっこをしたい気分らしいよ」

「あら、仕方のない子。それならそうと言えばいいのに」


 「アタシも行くわ」と言いかけるミルキを余所に、アアスフィアは砂浜に身を横たえる。ミルキの叫びに息を吐いて、ハイシアは走り去る。

 やることは山積みだと、ハイシアはクラッカの下へ急いだ。

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