第64話 責任

「お前たちから見て、頼りがいのある者だったってことだな」

「『良薬は口に苦し』。自分たちの意見が100パーセント正しいとも思っちゃいけなかった」

「飴も時には必要だ」


 カフェ・スラブをまた一口飲み込む兄を見、セルーナは首を傾げる。


「兄さんはさ、責めてほしいの?」


 ハイシアが喉の奥に言葉を詰まらせる。

 長い時間をかけて息を吐き出した。


「そうかもしれない」


 ハイシアの手の中でアイスクリームが溶けていく。

 ハイシアの顔は土気色で、頬の肉がたるんで見えた。


「笑えよ。いくら誰かを責めたところで、自分ん製だとも思っているんだ」

「兄さんは精霊種として正しすぎるんだもんね」


 セルーナが自分の分のコーヒーを飲み干すのを見て、ハイシアは自転車のほうへ歩いた。

「ありがと」と微笑んで、セルーナが自転車に『固定』の力を使う。


「トワイライトはさ、自分の居心地のいい場所くにを作りたかったんだろうね」

「庇うのか?」

「まさか! 理由込みでも許されないことをしたもの」


 こぐ力を受けて、自転車が唸りだす。

 ハイシアは自転車を漕ぎながらセルーナを見ていた。セルーナはコーヒーミルに向かっている。

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