第54話 どう断った?

「それで、どう断ったんだい?」

「『失せろ。僕は犯罪野郎とは組まない』って。今考えるとものすごく失礼なこと言っちゃったや」

「テヤは?」

「『アラそう』だけ。でもヒメコマネズミのときにテヤが『似たことをやっている癖して、気づいてねぇのね』って言ってるのも聞いた」


 セルーナは泡だて器を止めた。

 まだ液体っぽさの残るクリームがボウルの中に鎮座している。


「コーヒー淹れるから、ボウルかわって」

「一人でするのか?」

「固定を使うよ」


 ハイシアは眉を寄せボウルを受け取る。

 がっしがっしと音を立てて泡だて器を動かし始める。

 セルーナは眉を下げて「力入れすぎだよ」とカウンターへ歩いていった。

 自転車に一度手をかざして、乗る。


「テヤは分かってたのかも。僕がああいう形で夢を追いかけたら、遠からず兄さんを殺すって」

「単純に食料を盗ったことを言ったんじゃないか?」

「そうかな」

「そうさ」


 自転車から降りたセルーナがコーヒーミルに手をかざせば、ミルの電気が付く。

 豆を細かく砕きながら、セルーナはふーと息を吐く。


「カロンの首が、確か次の日だったっけ」

「結局結界に細工したのが誰だったのかは分からずじまいだったな」

「それ本気で言ってる?」

「え、うん」

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