第53話 テヤ4
たしか「夢を叶えようと思うなら、生物種になったほうがお前のためだ」って言われた次の日くらいだよ。
結界がほころんでいたのは僕のせいじゃないし、疑われて気分が悪かった。兄さんに「生物種になれ」って言われて、兄さんも僕を信じていないのかって、夢を叶えるには精霊種じゃなければ無理じゃないかって頑なになってた。
気分が悪くてさ、雲も鈍色で海を押しつぶしてきそうに見えて、森の中に逃げ込んで膝を抱えてたんだ。
そうしたら、声をかけられた。
「セルーナよぅい。おまさん、何がしたいのかしら? 兄への反発? 生物への慈愛? 全然ちげぇなぁクソヤロウ」
「用がないなら帰ってくれない?」ってつっけんどんに言った。「それか兄さんの所にでも行くとか」って付け足したりしてさ。
テヤは気分なんてちっとも悪くなっていませんって顔で、両手を肩の高さまで上げてお道化てた。
「おぅおぅマァ! ツレない方だわさ。ネェ、セルーナさまアタクシ協力してやるのもやぶさかじゃないぞ。一言だ。一言『兄を殺せ』と言いましたら見事! ――精霊種の首、上げてやるよ」
すごいよね、テヤ。
瞬きの間に姿見に映る人が変わるんだもん。
僕はニヤニヤ笑うのやめてくれないかなって考えてた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます