第48話 備蓄泥棒

 最近よくめまいを覚えるな、とハイシアは考えた。

 備蓄の減った食糧庫の前、備蓄管理係の3人が話し合っている。ヤムは額に手を当て、リプルは曇りガラスのような目で虚空を眺め、ティアーズは頭を抱えていた。


『セルーナが備蓄を盗み出した』


 3人の言い分をまとめるとそうなった。

 理由は明白だ。


「あの大馬鹿者、今度は蝗に情けをかける気か?」

「これでは今日の食事は用意できませんね……」

「とりあえず、ハイシアとセルーナの分は抜きでいいかしら?」


 食事係のウォトとサマーシャワーがひそひそと話し合う。


「……精霊種、並びに物種のみんなを説得してみるよ」


 痛む頭を押さえるハイシアを、ヤムが見つめる。


「それでは納得せぬ者も出よう」

「分かってる。どうにかセルーナから取り戻せないか試す。あと、警備係に掛け合って、誰か一人見張りに建ててもらえないかも聞いてみよう」

「もう、ハイシアが見張ってたほうがいいと思うんだけれど」


 サマーシャワーがおずおずと手を挙げる。

 「それはどっちを?」と尋ねれば「セルーナを」とか細い声が返った。


「最近のセルーナは何か変だよ。ゴルフェートのことは悲しいことだけれど、なんでそれで不死なのか分からない」

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