第47話 言い訳

 セルーナは首の後ろをこすって目をそらす。


「一個言い訳してもいい?」


 カウンターを探りながら、くぐもった声でセルーナが言う。


「どうぞ」

「フラクロウとの対話がめちゃくちゃなハードスケジュールでさ、研究の時間だって怪しかった」

「でも花を後回しにしたのは事実だ」

「ごもっともです……」


 セルーナは視線を彷徨わせて、レコードの脇で止める。

 表紙に砂の積もった雑誌を持ち上げる。


「兄さん、本、あったよ」

「お、本当だ。……うん、このカフェ・スラブってやつ頼もうかな」

「これ結構時間かかるよ」

「セルーナにとっては願ったりだろう?」

「そりゃそうだけど」


 楽しそうに笑うハイシアの顔を、セルーナは注意深く見つめる。

 ハイシアは辛く悲しいときほど、生物種のふりが上手くなる。

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