第46話 花の死

 白い花が枯れていた。

 赤茶けた茎を曲げて、茶色になった花びらをいかにも重そうに垂らす。

 花は死んでいた。


「セルーナは世話を怠った。だから花が枯れた」


 ミッドは冷たい目をして顎を高く上げる。

 地面に膝をつき俯くハイシアは、虚ろな目から一筋二筋と涙を流した。


「約束よ、ハイシア。アタシの薬草園の花も草も、もう何一つだってアンタたちには譲らない。……それでよろしくて?」

「ええ……問題、ありません」


 花は、ひと月ほど前、やっとハイシアが譲り受けたものだった。

 『万病を癒す花』をセルーナにねだられたハイシアが、半年ミッドと交渉して得た、花。開花させるのが非常に難しく、世話を怠ればたちまちに枯れてしまう花。

 不老不死の研究に没頭するあまり忘れられた、セルーナのための花だった。


 ミッドが立ち去った後、ハイシアは素手で土を掘り、花の墓を作った。

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