第44話 本はどこだ?
「……あの言い分は正しかったと思うけど」
「ああ。言い分も反応も、生物種に寄り添った素晴らしいものだった。――セルーナ。コーヒーを淹れてもらってもいいかな」
セルーナは黙ってハイシアと自分のカップを持つ。
ハイシアも黙って、セルーナが持ってきた泡だて器とボウルを持つ。
「せっかくだし、喫茶店でしか飲めないようなものを頼もう」
「えー、専門的な知識まではないよ?」
「休憩室に勉強用の本があるらしいんだ。カウンターに置いておいてくれるって言ってたけど、それっぽいものはない?」
泡だて器を洗い場に置くハイシアを、カウンター横の扉からセルーナが腕を組んで眺める。
兄の言葉通りなら、と考えたのだろう。自転車の運び込まれたカウンターを見る。
器具のいくつかは砕け、砂の積もったカウンター。
セルーナが使った器具だけが新品のように真新しかったカウンター。
セルーナがカップの並ぶ棚に手を伸ばす。比較的砂の被害が少ないカップたちから、丁寧に砂を払う。
厨房ではハイシアが泡だて器を洗っている。
独り言のようなハイシアの声は無人の店内では聞こえやすい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます