第43話 セルーナの嘆き

「ふざけるな!」


 ヤムに呼ばれてきたセルーナは、母の血がこびりついた貫頭衣を着替えもせずに泣きじゃくっていた。

 ヤム曰く、ずっとゴルフェートの首を抱えて泣いていたのを連れてきたのだと言う。


「ゴルフェートをこんなにした奴と組むなんて正気じゃない!」

「イヌダシオンを守るのが母さんの遺志だ」

「……だとしても!」

「セルーナ、俺たちは精霊種だ」

「シェルの家族を殺した奴等だ! スノズから健康を、ココスから正気を、モルギアナから故郷を奪った! そんな奴らとなんて!」


 ハイシアは黙って頷いた。

 保護、浄化中の住民が黙っていないことくらい分かっていた。

 

「それでも、滅ぼされるわけにはいかない」

「命惜しさに誇りを捨てるのか!?」

「守るべきは誇りじゃない。……全員が取り戻したいものを取り戻すことだ。それまで踏ん張ることだ」

「詭弁だ!」


 悲鳴を上げてセルーナは走り去る。

 掴んだ腕は振り払われて、追いかけようとした矢先「ハイシア、話がある」とルゥルゥが歩み寄った。

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