第41話 大図書館員の帰還

「今……なんと」

「ハイシア、そう青ざめないで」

「ここは……イヌダシオンはもう、駄目になるのか?」

「ハイシア」


 強く名を呼ばれて、ハイシアは言葉を飲み込む。自制しないと、まだ縋りついてしまいそうだ。

 ルゥルゥとプルウィア。大図書館へ帰ると言い出した2人は、青ざめて立ち尽くすハイシアに淡い笑みを向ける。


「門が安定するまで、一旦戻るだけだ。大丈夫だよ」

「うそだ」

「本当に門が不安定なだけなんです。アレク……プルウィアさんの里帰りも一回しないかって」


 それ以上は、言いつのれなかった。

 プルウィアアレクシウスもルゥルゥも未来を読める立場にある。大図書館には”すべて”の知識が収められているのだから。

 彼らに帰還命令が出るときは、大図書館員でも身を守れないほどの大災害が迫っているときだけである。

 混乱を招かないためだけに『行き来の門の不具合』と言い出したことくらい、方便くらい、ハイシアにも分かるのだ。


 思えば、この日。

 ハイシアは、自分の命を捨てる覚悟を決めた。

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