第38話 ファローとフローセ

「意外……てっきり儀式すっぽかしたときには見限られてたのかと思った」

「お前が寝台で泣きぬれていたらそうしただろうけど、本当に手足が痺れて動けないみたいだったから」

「それでも泣くほど怒られたけどね」

「示しがつかないだろ」

 

 泡立てた生クリームをコーヒーに注ぎ込んで、セルーナは息を吐く。

 大方、ハイシアのやさしさの分かりづらさに頭が痛くなったのだろう。

 実際、アイツは怒られた時の剣幕は恐ろしくって、こちらの背筋まで凍り付きそうだった。間違っても、母を亡くして嘆く子にする態度じゃなかったが、彼らは精霊種だ。それが、普通だった。

 セルーナはファローやフローセを憐れんだが、本質で彼らは似通っている。

 ファローとフローセは物種の人形族だ。

 どちらも生まれたのは『女王の箱庭』と呼ばれるデスゲームの会場。

 素人が願いをこめて作り、呪いを与えたのがファロー。

 職人が呪いをこめて作り、願いを与えたのがフローセ。

 よく似ているようで正反対だった二つの人形は、片や灰の災害に立ち向かい、片やフラクロウに立ち向かい、似たような終わりを迎えた。

 たった一本のねじを残して、燃え尽きるような終わりを迎えた。

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