第36話 生物種の振る舞い

 ハイシアはコーヒーカップを持ち上げて肩をすくめて見せる。

 実に生物種らしいやり方は、しかしセルーナのお気に召さなかったらしい。

「兄さん」と少し怒った声が返る。


「なんだよ、ちゃんとしてただろう?」

「兄さん、鈍いよ」

「いきなり悪口か」

「うるさい分からず屋。本当にキャメルが可哀そうになってきた」

「分からず屋はそっちだろう。俺の話を聞きやしない」

「昔はね? なら行ってみてよ。今、昔の嫌だったこと全部!」


 ハイシアは眉を持ち上げてカップを置いた。

 そろえた手を優雅にそろえて、足を組み、体を斜めにする。


「イヌダシオンを危険にさらしたこと。……今も昔も、俺が怒っているのはこの一点だ」


 思い出が再生される。

 ハイシアがセルーナを見限る、最初の一歩が。

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