第35話 ファロー

 「ぷは」と息継ぎ。眉間に強くしわを寄せて「そう」と机に両肘をつく。

 垂れ下がる神を両手で掻き上げる動きに色気があるのはどうしてだろう、と考え、セルーナは手を動かす。


「後悔は本物だったし、必要とされたい気持ちも本物だったよ。疑わないであげて」

「疑わないさ。でなければ、灰の災相手に戦ったりしない」

「……ファローが裏切ったのは宿命だと思う?」

「宿命、なんてものはないよ。歩いた道に名前を付けただけだ」

「ゴルフェートの死も?」

「お前は本当に引きずるなぁ」


 呆れた声でハイシアは言った。

 無表情のままだが、それはハイシアが気を抜いている証だと、もうセルーナには分かっている。


「兄さんはずっとそうだったね」

「分かりやすくあれと願われてたからなぁ」

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