第34話 タタリ人形

「あれじゃファローには届かないよ。タタリ人形だもん」

「責めてるのか?」

「まさか」


 クッキーをもそもそと飲み込んでからセルーナは言う。

 ハイシアは拗ねたように頬を膨らませた。


「お前が言ってくれなきゃ分からない」

「はぁー」


 セルーナは長いため息をついた。

 タタリ人形とは本来の用途で使われなかったり、作成者本人から出来損ないスクラップと呼ばれた人形族がなり果てる一種の災害だ。

 恨みや怒りに突き動かされ、周囲の命を刈り尽くす。それが、タタリ人形。


自己肯定感が存在しない相手ファローに『価値が揺るがない』はキャメルの声を誉めるようなもの地雷だよ。ただでさえ、手紙を飛ばしちゃって、それが母さんの死因になったって気に病んでたんだから……」


 ハイシアは苦い顔で、残りのコーヒーすべてを飲み干した。

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