第31話 対立

 カップを一人1つ持って、ハイシアがはじめ座っていた席へ歩く。

 座席と机に積もった砂を手で払い、衣装を払って着席する。

 言葉が一度途切れると、やけにむず痒い沈黙が二人の間に横たわった。

 何度もセルーナが顔を上げては難しい顔で顎に手をやる。

 ハイシアはコーヒーを2・3口飲みながら窓の外を見た。

 砂塵は相変わらず壁のように吹き荒れて、タンブルウィードのように街路樹が転がっていく様が見える。

 二人とももう気が付いているだろう。

 これから先の話は、傷つかないままではできない。


「セルーナ、提案なんだけど」

「嫌」

「まだ何も言っていないだろう……」

「生クリーム持ってくるね」


 ハイシアの呆れたような声を無視して、セルーナは冷蔵庫から生クリームと砂糖を探し出す。

 ボウルと泡だて器も持って、机に戻る。

 その場で生クリームを泡立て始めるセルーナに溜息を一つ。


「お前は――」


 ハイシアは躊躇いがちに口を開いた。


「どうしたら満足したのだろう」

「夢を認められたら」


 セルーナは生クリームを泡立てながら即答した。


 刻一刻、滅びが近づいてゆく。

 2人は焦らない。


「認められるわけないだろ」


 ハイシアの声は、少し鋭い。

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