第29話 女王の意思①-2

 カロンが身を乗り出す。


「陛下は『世界中の食物』を食した方だ。あの方は、我が身をなげうって飢えを失くそうとしておられる!」


 なるほど。

 理論としては可能だろう。

 遠い昔「万物の木」と呼ばれる木が存在した。木の前に立った者の望んだ食事が生る木だ。木は一にして全なる生命体の細胞でできていたという。


「女王様がお食事になられたものは、フラクロウの食事に限られるのでは?」

「陛下は本当にすべてを平らげられた。深い海の底から天高き同族に至るまで」

「……覚悟あってのことと判断するがよろしいか」

「もちろん」


 ハイシアは無言で立ち上がる。衣が翻る。

 足を折った姿勢のまま、カロンの羽先がぴくりと動く。


「渡すことは不可能。ですが、協力であればお引き受けいたしましょう」


 思わず腰を浮かしたカロンへ微笑み、ハイシアはヤムを呼びに行った。

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