第20話 ゴルフェートの死

 母の首が転がったとき、ハイシアは里長を継ぐために花と海綿で着飾っていた。

 顔を隠すヴェールの下に、点々と紅い色。土気色を通り越した頬が布の端から除いている。

 シェルの濁った叫びと共に、彼の周囲にどす黒い炎が沸き立つ。

 侵入者はいっそあどけない表情で剣を天へと向けた。


「汝らの戦士は実に強く、しかし我らの前に敗北した。潔く敗北を認めるのであれば、これ以上の武力は振るわないと約束しよう」

「敵対生命体を感知。ただちに殲滅形態へ移行」

「シェル、モルギアナ、やめなさい。あなたたちが傷つくことはありません」


 ハイシアは相手の口上は無視して、今すぐ飛び出しそうだった2人の肩に手を添える。

 ほんの昨日、気を失って、起きて、ファローと戦って、たったそれだけの時間しか経っていないのにとめまいを堪える。

 母の死はすでに感知していたから特段ショックというわけでもない。ただ面倒なことになったな、と思った。


「奥で待っていて。モルギアナ、子どもたちを護衛してください」

「あくまでも抵抗すると?」

「シェル、モルギアナと行って。ヤムとクラッカを呼んできてください」

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