第19話 何だったのだろう
「もう、兄さんってばまたぼーっとして!」
セルーナの不満げな声に、ハイシアは曖昧な謝罪を返した。
自転車を漕いでいた足を止めないまま、コーヒーミルの様子を見る。
「うん、いい感じ」と笑うセルーナ。ふわりと砂塵の中に薫る香ばしい香り。
ハイシアは自転車を漕いでいた足を止めて、手慰みにカウンター脇のクッキーへ手を伸ばす。
瓦礫をどけて、粉々に砕けていたクッキーを救出する。
「例えば今、俺がこのクッキーを直したとする。それは精霊の行いに背くわけだ」
セルーナは緊張した背中で、ハイシアの言葉を受け止める。
「精霊ってなんだろう」
「現象と信仰により生まれて、責任のために死んでいくもの」
感情を削ぎ落したセルーナの言葉にも、ハイシアは黙っている。記憶が、再生される。
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